Stitch by Stitch -展覧会感想

2009.08.06の記事より

Stitch by Stitch (ステッチ・バイ・ステッチ 針と糸で描くわたし)、東京都庭園美術館へ行ってきた。以下備忘録がわりに感想を。

この展覧会では、針と糸を使った表現をする現代美術作家とアウトサイダーアーティスト(鹿児島の知的障害者支援施設「しょうぶ学園」の刺繍グループ「nui project」の作家達)の作品を展示した興味深い展覧会である。工芸的な技法を用いた現代アートというのは、最近のはやりのうちの1つではあると思う。服の糸をほどきまくって、どうこうする、とか、糸をはりめぐらせてインスタレーションするという作品は、本当によく見かける。正直、そういう意味ではかなり食傷気味なのですが、この展覧会で私の心を最も打ったのは、アウトサイダーアーティストとそうでないアーティストの違いです。違いは、ある、と思いました。大きな違いはテーマの深さのある/なしですが(注1)、普通の作家たちの作品にも、ひと針ふた針とコツコツ縫って行く、という反復行為のせいでしょうか、ある種の鬼気めいた「運針への執着性」のようなものが感じられ、テーマの深さどうこうという話を超えて、「この人たち、みんなパラノイア。。」と強く思わせられました。そういう意味では、知的なコンセプトやら難解な解説なしには成立しないアートと比べると、この展覧会の作品は、「アートというのは、(ある種の)狂気や執着から産まれる(こともある)のだと」いうことを思い出させてくれた展覧会でした。とてもいい展覧会でした。

注1:ナイーブアートやアウトサイダーアートの作家であるからといって、テーマの深さがないとは限らないと思いますが、今回の展示では、深さのある/なしの違いが感じられました。

因に一番主観的に好きな作品は「夜警の刺繍」(奥村綱雄、2001年)。狂ったようにステッチを繰り返す夜警。最高でした。