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ジュリア・マーガレット・キャメロン展へ

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三菱一号館美術館にて開催中の、ヴィクトリア朝時代の写真作家、ジュリア・マーガレット・キャメロン展の内覧会に行ってきました。三菱で写真の展覧会を見るのは、数年前のバルテュスのポラロイド展以来でした。 現代の芸術写真の源流をかいま見る事ができる、とても印象にのこる素敵な展覧会で、思ったより見るのに時間がかかり、最後は若干駆け足でした!時間は余裕を見てお出かけされるのがよいかもと思いました。 ジュリア・マーガレット・キャメロン (1815-79、昨年生誕200周年)は、記録としての写真を芸術として扱い、作品制作したヴィクトリア朝時代の英国夫人です。カメラを手にしたのは、48歳、写真は独学。精力的に15年間、制作活動をし、V&Aミュージアムでの初のアーティストインレジデンスを経験した作家でもあるそうです。ヴァージニア・ウルフは姪の娘にあたり、裕福で知的な環境にいた女性であり、今とは違い、誰もが写真を撮影できる時代ではなく、一部の限られた人(とくに男性)のものであった時代に、こんなたくましい女性がいたのか、、と驚きました。 キャメロンの使用した写真技術は、 コロディオン湿板方式 によるネガ作成-> 鶏卵紙 によるプリントが中心だったそうです。何のことやら、と思われる方も多いかもしれませんが、まず、湿板は、 ガラス上に薬品を塗布->それを暗室にて感光させネガを作る ->薬品が湿っているうちに、カメラにセット -> すぐ撮影 ->すぐに暗室で現像する。 という慌ただしく時間に猶予がない方法で撮影しなくてはならない技術だそうです。 基本的に、プリントはベタ焼き(=ガラス板に印画紙を貼付けて感光させるやり方で、拡大プリントや縮小は基本的にできません。)しかできないというやり方でした。プリントは、鶏卵紙という、今もある古典技法の1つで、卵の卵白を利用した感光材を使うプリント方式の事です。鶏卵紙は、太陽光に強いとは言えず、劣化しやすい印画紙のようで、会場は暗めとなっていました。 カラーの写真がない時代です。かなりの体力、気力が必要な写真技術を、現代から見れば、小柄な中年女性がもりもりとこなしていく。しかも、ロンドンではなく、不便なリゾート地、ワイト島に住んでいたのに、という状況を想像するだにすごいです。さらに、キャメロン

「神は局部に宿る」都築響一 presents エロトピア・ジャパンへ

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渋谷、 Bunkamura 向かいの建物にある、 アツコバルー さんで開催中の 都築響一氏 による、秘宝館、ラブホテルなど、日本文化の裏街道、エロス部分に焦点を当てた展覧会が開催中です。(2016年7月31日まで)こちらは入場料が千円かかりますのでご注意ください。また、場内は写真撮影が可能です。 さて、全国から失われたとも思われる秘宝館の展示だけかと思いきや、そうではなく、都築の作品で有名な日本全国のラブホの写真も壁一面に展示されていました。 後は、リリーフランキーさんの恋人という噂のラブドールの飯倉みなみちゃん(70万円くらいとの噂ですが)も展示されており、なんと手指を消毒後、触ることも可能でした。。。こんな機会は滅多にないので、触ってみましたが、さすが高級人形、素晴らしいもちもちのお肌にびっくり。。。そして秘宝館の人形たちって、 ロジェ・バディムのバーバレラ みたいですよね?そんでもう、これはもはやお笑いの境地といいますかなんといいますか。。。エロくないんですよね、なんか。会場は和やかな雰囲気でした。不思議ニッポンの体験、ちょっと展示の量に比べてお値段高めですが、都築響一ファンは行くべしですね。 リアルな人間より美しいのではないかと思わせる、みなみちゃん。 そして、こちらを見た後、 トワル・ド・ジュイ をBunkamura で見てリフレッシュするのも、また逆コースもありかもしれませんね〜。 「神は局部に宿る」都築響一 presents エロトピア・ジャパンへ 2016.06.11 Sat - 07.31 Sun (火曜は休みですのでご注意ください) ATUKOBAROUH(アツコバルー) 〒150-0046 東京都渋谷区松濤1-29-1クロスロードビル5F  tel:03-6427-8048 Wed - Sat 14:00 - 21:00 Sun & Mon 11:00 - 18:00 ¥1000 (not includes a drink) にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

ムハマッド・ユスフ展「Catching Javanese Eyes」展へ

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渋谷ヒカリエ8階のTOMIO KOYAMAで開催中の、 ムハマッド・ユスフ展「Catching Javanese Eyes」 へ行ってきました。 インドネシア、東ジャワ出身、1975年生まれの作家、 ムハマッド・ユスフ による展示です。伝統的な装いのインドネシアの人々を木彫や版画の版木のように色が塗られた平面の木彫、ドローイングで表現したこの展示のタイトルは「 Catching Javanese Eyes 」なのは何故なのか。ジャワ人たちの目を引くこと、という意味かと思いますが、そこには、グローバリゼーションによる失われかけつつある、伝統的なものへの熱いメッセージが隠されているのかもしれません。渋谷でのマイ巡回ルートにヒカリエのTomio Koyama Galleryは入っているのですが、8階まで行く余裕がないこともあるのですが、今回は行けてよかったです。毎回、広いジャンルの現代美術の展示をされており興味深いギャラリーだと思います。 ムハマッド・ユスフ展「Catching Javanese Eyes」Mohamad ‘Ucup’ Yusuf 会 期 2016年6月22日(水) - 2016年7月18日(月) 時 間 11:00 - 20:00 場 所 渋谷ヒカリエ8階 8/ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery 料 金 入場無料 Admission Free ヒカリエの8/ART GALLERY/ Tomio Koyama Galleryの次回展示は、陶芸の『横山拓也 運動とテクネー』2016.7.20-8.8 までです。 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

西洋更紗トワル・ド・ジュイ展へ

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「工場の仕事」ーユエによる下絵 渋谷のBunkamura にて開催中の「 西洋更紗トワル・ド・ジュイ展 」へ行ってきました。 今年楽しみにしていた展覧会のうちの1つでした。トワル・ド・ジュイといえば、アルカディアなイメージやロココ風な光景が描かれた、単色コットンプリントという解釈をしておりましたが、どうもそれは間違いとまではいかないまでも、正確ではなかったようです。トワル・ド・ジュイというのは、ジュイの布という意味で、仏の都市ジュイ市で生産された、主にドイツ人プリント技師、オーベルカンプ(1738-1815)が立てた工場で生産されていたコットンプリントの事を指し、私が思っていた単色プリントの布だけではなく、色とりどりの布が生産されており、むしろ生産の主流はそちらだったようなのです。 創業者のクリストフ=フィリップ・オーベルカンプ(1738-1815) の時代はナポレオンの時代、フランス革命の時代と重なる時代です。フランドル地方の特産品であるウール、そしてシルクが主流のこの時代、インドとの貿易の結果もたらされた 更紗(=文様がプリントされたコットン)が<安価であり、簡単に洗濯できる> と、大人気となるのですが、伝統的な毛織物業者の抵抗にあい、暫く禁止令が出ていたほどだったそうです。そんな中、オーベルカンプは禁止令が解かれてから、20歳で召喚されフランスに工場を開いたという成功者でした。ナポレオンが工場を訪問するユエの絵画も展示されていました。 ユエ画「ジュイ=アン=ジョザスのオーベルカンプの工場」 (右下のとんがった帽子の人物がナポレオン) 成功の秘密は、オーベルカンプ自身もデザインはしていたようですが、 アカデミーより動物画家の称号を与えられていたジャン=バティスト・ユエ を専任デザイナーにしたことも大きかったようです。彼の描く田園風景の銅板プリントが人気を博したそうです。私が当初トワル・ド・ジュイの定義だと思っていたのは、この時代の単色銅板プリントに単を発すものだったのですね。そしてこの田園風景は、 古くは1600年頃のルーベンスやテニールス親子、シャルル・ブラン、ブーシェに下絵提供を受けたこともあった、タペストリーにモチーフなどの原泉が見受けられる そうで、会場では、鹿狩り図や、花のモチーフのタペストリーも数点展示されていました。