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師走になってしまいました

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MOT 東京都現代美術館 「 ミナ ペルホネン/皆川明 つづく 」 「MOTアニュアル 仮の声、新しい影」 「ダムタイプ アクション+リフレクション」 「コレクション展示:いまーかつて 複数のパースペクティブ」 目的はMOTアニュアルとダムタイプだったのですが、ミナの展示が思わずよかったです。会場はもちろんミナが一番人が入っていて、一番みている人がニコニコしていた。そして観客はほぼほぼ女性でした。制作風景の映像がかなり良かったです。皆川さんの人間性が素晴らしいということが伝わるものでした。その映像を見ている人たちはほとんど女性で、皆川さんが司祭様で女性たちはその信者みたいな光景でした。ちょっと意地悪な見方でしょうか。でも本当にそう見えました。そしてそれで構わないと思いました。 ダムタイプはかつて私にはカッコ良すぎて神々しい存在でしたが、今の時代が当時の彼らのテクノロジーを飛び越えてしまったため、少し古びて見えてしまうことが悲しかったのですが、そういう視点で鑑賞してはいけないなと思いつつ、やはり身体表現の展示は実物がないと残骸感が高まってしまうので難しいなと思いました。にしても、本当にテクノロジーを作品にとりいれるのは難しい事です。。 東京都美術館 「 松本力 記しを憶う 」 「 コートールド美術館展 魅惑の印象派展 」 松本力のアニメーションが大変良かったです。手書きで1コマづづコンテを描いてそれを自然光の下で撮影してアニメにしているとか。なんとも言えないキラメキが作品の中から滲み出していました。作家による言葉も良かった。 一方、コートールドは、当たり前のように混んでいました。セザンヌの悪口は言ってはいけない雰囲気がありますけど、私はやっぱり彼はあんまり絵は上手じゃなかったんだなと思います。もちろん、彼の思考力は卓越していますけども。最後に、ドガの窓辺の顔がほとんど見えない逆光風に描かれたポストカードを買って帰りました。 東京ステーションギャラリー 坂田一男「捲土重来」 監修は岡崎乾二郎(岡崎さんは今愛知で展覧会中ですね)岡崎さんの作品が好きなので行ってみました。ポスターもタイトルも良し、さすがのステーションギャラリーの展示でした。坂田一男という作家は不勉強で知りませんでしたが、キュビズムを愚直に追求した作家の生き様のよ

話しているのは誰?ー現代美術に潜む文学

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話しているのは誰?ー現代美術に潜む文学 国立新美術館ー2019.8.28-11.11 ご無沙汰しております。6月以降、見たものは、画廊での展示、 ディミトリアス・パパイオアヌー の舞台(@彩の国)、サントリーホールで 清水和音 と東フィルの3大ピアノ協奏曲の饗宴、チームラボ(@お台場)などで、個人で美術館へ行ったものは、なんとまあ、この新美の展示(しかも会期末に)のようです。6月以降、10月末までろくに見てないということです。仕事が急に忙しくなったのと、個人的な事情で足を運ぶことができませんでした。 さて、話を元に戻して、この文学と現代美術の関係ということで、作家は6人。女3、男3で、写真が2、映像が1、写真出身のインスタレーションが1名、油画出身の立体系が1名、というセレクトでした。結論からいうと、 圧倒的に女性3名の作家の作品が優れていた と思います。特に、 山城知佳子 、彼女の映像作品が抜きん出ていました。山城の作品は、綿密に、しっかりと、時間をかけて作られた、地元沖縄の基地問題をテーマにした作品でした。普通は、一方的に批判するのがアートのテーゼとして一般化した手法だとしたら、彼女の場合は、そうではなく、反対/賛成、両者の視点を取り入れていれている点と、その圧倒的な演出力の強さ、個性が素晴らしかったです。映像作品は前回の横浜トリエンナーレでもそうでしたが、あまりにも数が多いと、見るのに飽きてしまい、正直、映像作品は好きではありませんでした。が、山城の作品は飽きることがない。食い入るように見てしまう魅力がありました。 小林エリカの展示風景 あと、小林エリカ。彼女のオリンピックへの綿密なリサーチがすごいと思いました。頭がいい人、という印象です。オリンピックというすごく政治的な事をテーマにしているのに、それを文学やアートと絡めてしまうことができる力のある作家だなと思い関心しました。こういう多面的な作家が今後もどんどん増えていくだろうと思いました。 私がその才能に驚いたのは、小林と山城、この2作家でした。 「文学」との絡みは正直弱いかなと思う作品もありましたが、なかなか良い展示でした。 11月3日は文化の日でこの展示は無料になるそうです。おすすめします! ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらク

装いの横浜チャイナタウンー華僑女性の服飾史

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2019年6月30日まで、 横浜中華街 にある「 横浜ユーラシア文化館 」にて開催中の 華僑 女性の民族衣装、 チャイナドレス についての展示へ行ってきました。(注意:有料、300円です。)横浜ユーラシア文化館、初めて行きましたけども、空いていました。穴場かな?横浜市発展記念館と同じ建物の中にあるので、横浜の歴史の展示を見にきた、修学旅行?社会科見学と思われる子供達の姿もちらほら見かけました。 さて、展示ですが、全室撮影禁止、、残念でした。フロアが狭いので混乱を避けるためでしょうか。一部でもいいから撮影可能があれば嬉しかったです。 1859年に横浜港が開港されてから、160年。中国からの華僑の方々がやってきて、そこで花開いた服飾の歴史があり、工業の進化共に、チャイナドレスも変化していく様が、実在したチャイナタウンの大物女性たちの持ち物を中心に展示されていました。 最初、中国の女性の服は、上下セパレートでした。上着はセンターで飾りボタンなどで着脱します、そして、下は緩やかなロングスカート。そして1920年代にワンピース型のチャイナドレス(旗袍 チーパオと読みます)が登場します。現代的な動きやすいスリットの入ったワンピース型と表現されていましたが、動きやすいのかな?と個人的には思いました。セクシーな感じで、現代的だとは思いますが、個人的には、セパレートの上下服が便利そうと思ってしまいました。 興味深いのは、襟の部分でした。つけ襟のものもあることを初めて知りました。ファスナーが開発されるまでは、ホックやボタンで留めており、着脱に時間がかかったのではと思われる上着の構造でした。 チャイナ服は上海の人たちによって主に作られていたそうです。その後、横浜チャイナタウンでも(上海出身?)テーラーができ、地元で作られた旗袍が登場します。横浜チャイナタウンの旗袍の1つの特徴は、日本文化を取り入れた喪服のスタイルでしょうか。黒のチャイナドレスを中華街の女性は着るそうですが、これは中国にはない様式だそうです。独自の発展が各地の華僑の街でありそうで、それを追うだけでも1冊の本ができそうで興味深かったです。 チャイナタウンで美味しいものを食べてから、少し歩きますが、腹ごなしに展示を見るのもおすすめです〜。梅雨入りしましたが、よかったら行ってみてください。 ■-

ルート・ブリュック 蝶の軌跡ー東京ステーションギャラリー

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東京ステーションギャラリー にてGW初日に公開が始まった、 フィンランドの作家ルート・ブリュックの「蝶の軌跡」展 へ行ってきました。一言:かなり、おすすめです。 常に、日本では知られていない作家の展示に意欲的に取り組まれている東京ステーションギャラリーですが、今回も、日本ではまだ知られていない、 初の個展開催 となる ルート・ブリュック(1916-1999) ですが、母国 フィンランド では国民的作家の1人とされるほどの有名作家だそうです。 ライオンに化けたロバー鋳型を使った作品 陶芸作家 です。ですが、展覧会の冒頭にキャプションでも書かれていましたが、 陶芸、工芸とかそう行ったジャンル分けはどうでもいいのではないか、というほどのスケールの広さを持った作家 だ、と。これには深く同意するものが個人的にはあり、常々、ジャンルで区分けをするのは、 開催者、団体、評論側にとって分類することが好都合だからではないか と思っていました。本来、そのようなジャンル分けは不要で、創作は自由、想像も自由なのですから、ジャンルの垣根は取り払うべきと個人的には思います。教育に関してはある程度の専門化、分類は仕方のない面もありますが、なるべく自由な制作を許すべきと個人的には思っています。 と、話が逸れました。 ルート・ブリュックはあの アラビア窯 のデザイナーとして長年活躍し、テキスタイルなども作ってきたそうです。ジャンルの垣根を超えていることと、もう1つ私が注目したのは、作品の変遷に劣化がない点です。 彼女の作品を今回はまとめて、年代順に見ることができたのですが、写真のような、可愛らしい作品の側面は影を潜め、後年は、抽象芸術に変化していきます。その変化が、「ああ残念、昔の方が良かった」ではなく、素晴らしい方向に花開いているように私には思えました。 抽象化した作品の1例が上の写真です。実際はかなり表面に凹凸があり、立体的な作品となっていました。最終的には、もっと色をそぎ落とし、自然を淡い色で細かく表現する作風へと行き着きます。 具象ー>抽象への変化が、不思議と作品の流れの中で違和感なく感じ取れました。 個人的には、大変オススメの展覧会です。 展覧会関連グッズですが、3色(白、ライトグレー、ライトグリーン)展開している「ライオンに化けたロ

大日本タイポ組合展 「文ッ字」&楽しい「文字フリマ」へ

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GWの初日に町田市民文学館へ行ってきました!フォント大好きです〜。仕事柄もあり、フォントもだいぶコレクションしてきましたが、最近はシンプル文字に回帰気味な私ですw これは文字フリマに参加されていた作家さんの生け花作品 さて、大日本タイポ組合というのは、2人組の男性の実験的タイポグラフィユニットだそうです。平たくいいうと、「文字」にこだわったアートユニット、、ですかね?「デザインあ」展に参加されたりしてるので、その辺をイメージしてもらえたらと思います。 大日本タイポ組合の写真「イロハ」! 上の写真は、イロハニホヘト〜を日常の中から探すと言うもの。面白いですね!! 他にも色々文字について考えることができる面白い展示でした。 入場無料!GW中にお子さんと一緒にいかがでしょうか。 今回は、GW初日限定で、「文字フリマ」が! 今回購入したものは、まず、文字のピアスです。「無敵」は 霧蜂房(ろほうぼう) さん。 「きら」はTAJIMA KAHOさん。「ゆら」と迷いましたが、きら!に。英語が書かれたTシャツとか、結構みんなフランクに着ちゃうけど、母国語だとためらいますよね?でもあえてそこを楽しんで身につけたり、、、しないか普通は -_-でも面白くないですか?耳元で密かに主張するのは。 そして、下の写真は エディターの斎藤あきこさん の「堪忍袋」のスタンプカード!15コたまると、さよならになると言う恐ろしいポイントカード。右のは「架空の盛り盛り」名刺で、購入すると黒い部分に名前が入れてもらえました。斎藤さんのツイッター、めちゃ面白いから是非フォローして見てください!おすすめです。 思った以上に面白い展示&フリマで行って良かったです。。。来年もあるのかな?フォントイベント楽しいです。会期中いろんなイベントがあるようです。詳しくは下記ウェブサイトへ。 町田市民文学館ことばらんど にて、 大日本タイポ組合展「文ッ字-いつもの文字もちょッと違ッて見えるかも-」 は6月30日(日曜日)まで ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

福沢一郎展「このどうしようもない世界を笑い飛ばせ」東京国立近代美術館

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福沢一郎(1898-1992) は、戦前〜戦後、そして現代と長年に渡って活動した作家です。実は私、恥ずかしながら、勉強不足で彼のことをよく知りませんでした。 「このどうしようもない世界を笑い飛ばせ」と言うタイトルと、この絵! すぐに、見たいと思いました。そして今までまとめて見る機会がなかったのは何故なのか、と思うほどにそのユーモラスな画面に惹きつけられました。 福沢一郎は、東大文学部出身の知性派です。まず、展示してあったポートレートが作家ぽくなくて、学者?政治家か?と言う雰囲気で、へ〜なんか作品のイメージとかなり違って面白いな、と思いました。 東大がつまらなかった福沢は、朝倉文夫に弟子入りして彫刻家をめざし、パリへ渡ります。そして、今度は平面に転身。シューリレアリスムをベースにした油絵を描き出します。 四月馬鹿/1930年 上の作品は、撮影可能スペースにあった複製です。フランスのエイプリルフールにちなんだシュールレアリスム的な作品です。背景や意味がわかるとなお面白いですが、それがわからなくても、くすりとできる面白い作品が多かったです。 福沢の画風は、このあとどんどん変遷し、晩年はかなり違う作風になります。個人的にはこのシュールレアリスム+ユーモアの時代が一番気になりました。 福沢一郎展「このどうしようもない世界を笑い飛ばせ」東京国立近代美術館にて 2019年5月26日まで。おすすめです。 また、別フロアで開催されていた 「 イメージコレクター 杉浦非水 」展も大変良かったです! こんな図案家がいたのですね〜これまた勉強不足で知りませんでしたが、図録買うか迷うほど、個人的には良かったです。 ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ  ■-□-■-□-■-□-■-□ 前の投稿へ

2019年3月に見たものーインポッシブル・アーキテクチャー、東寺、志賀理江子展など

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早くも平成最後の3月が終わろうとしています〜。3月に見た展示を駆け足でまとめたいと思いますw 1. インポッシブル・アーキテクチャー(埼玉県立近代美術館) -3.24まで(会期終了しています) 実際には各種の事情で、建築されることがなかった、建築プランを公開した展示です。映像で再現したものも2点ほどあり、面白く拝見できました。これはズバリ、着眼点が優れた展示だったと思いますが、元ネタは、 磯崎新の「UNBUILT 反建築史UNBUILT」 (2001年)あたりからでしょうか。 wikiに[アンビルドアーキテクト]の項目あり。 で、個人的には「 建築されなかった建築物 」といえば、やはり、 ザハ・ハディド の新国立競技場プランですね。。建築は門外漢ですが、ザハは天才だと私は思います。ウィーンで見た、ザハの建築物は今までみた建造物の中でも忘れられないものの1つです。今まで見たことのない建物がそこにはありました。新国立競技場は本当に残念でした。今更遅いですが、ザハの競技場が見たかったです。。 そしてもう1点、 フレデリック・キースラー も入ってるかなと思ったら、入っていなかったので、これは若干驚きました。アンビルドといえば、キースラーがまず思い浮かんだのですが。。 埼玉県立近代美術館のサイト 2.東寺ー空海と仏像曼荼羅展ー東京国立博物館 2019.3.26〜6.2まで 東寺は昨年の秋に行き、一部工事中でしたので、その部分が展示に来たのかしらと思いました。ビッグな京都のお寺の展示、仁和寺など、昨年から続いていますが、今回は若干感動が薄かったです〜。 仏像で曼荼羅を表現されているものを観れたのは大変よかったのですが、多分、昨年東寺で、巨大な仏像をリアルに見てしまったのが原因かと。。あの大きな仏像はさすがに持ってこれないし、仕方がないのですが、先に東寺を見てしまったのは失敗だったかもです。。 国宝 帝釈天騎象像 今回購入した、図録が入るエコバッグ かなり、展示入れ替えがあるようですので、観たいものをチェックしてから行かれるといいかと思います。尚、今回は特別御朱印はなかったです!残念!個人的には、ぜひ、本当の東寺さんにお出かけされてみることをおすすめしたいです。 東寺展 特設サイト 東寺(お寺のサイト )

岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟 展へ

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東京都庭園美術館にて開催中の「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」 へ行ってきました。 この写真を見せたら、友人が「若い作家か?」と聞くのでいや、岡上淑子(おかのうえ としこ)さんは、御歳90にはなるという作家だ、と言いますと、驚いておりました。 たしかに、これが50年代に作られたとは思わないかもしれません。 フォトコラージュ によってつくられた作品群は1950年から56年までの7年間につくられたものだそうです。洋裁を学んでいた岡上淑子は、学校の課題を作るために、当時はまだ珍しい海外のファッション雑誌をきりぬいて、それらを組み合わせ、糊で貼ったコラージュを作ったところ、 瀧口修造 の目にとまり、彗星の如くデビュー、当時のアートの中心的場所の1つであった新宿のタケミヤ画廊でも展示をします。そして、画家の夫との結婚を機に、次第に作家業からは遠のき、しばし忘れられていたのですが、 写真美術館の学芸員であった、金子隆一氏に「再発見」 され、2000年に第一生命ギャラリーにて個展が開催され、そして、アメリカのヒューストン美術館にもたくさんの作品が収蔵され、アメリカで作品集を出版、そして、今年、庭園美術館で個展を開催、というおおざっぱですが、だいたいこういう経由のようです。 この庭園美術館での個展は、個人的には大正解だと思いました。 一応、フォトコラージュの作家は「写真作家」ととらえることができると思いますが(本当はそんな区分はどうでもいいとは思います。そのカテゴライズを作家が必要としてるとは思えないです)写真作家だからということで、写真美術館で開催されたら、ここまですばらしい展示にはならなかったと思います。写真美術館は、残念ながら、予算のせいもあるのか、展示する空間としては今1つかなと思うことが多いです。庭園美術館は建物も美しく岡上の作品世界と大変マッチしていました。また、写真とともに、50年代の服飾を紹介するエリアもあったのも大変よかったです。個人的な話ですが、写真だけの展示は、正直、観ていると飽きることがあるのです。最近では、写真作品でも、壁の色を変えたり、インスタレーションにしたり、映像を交えたりと工夫されてきているのが嬉しいですね。 展示の途中で、当時の美術系雑誌の批評のページがガラスケースの中に表示されている場所がありました。岡上

奇想の系譜展へ〜奇想ブームについて考える

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奇想の系譜展-江戸絵画ミラクルワールド 公式サイト 2019.2.9-4.7 東京都美術館 月曜休室 *3月20日(水)はシルバーデイのため混雑が予想されるとのことです。 「 奇想の系譜 」とは、 美術史家 辻惟雄(つじ のぶお) が1970年に発表した書籍のタイトルです。私も1冊持っており、とても楽しく読んだ記憶があります。 岩佐又兵衛、狩野山雪、 白隠慧鶴(はくいん えかく)、 伊藤若冲、曾我蕭白、長沢芦雪、鈴木基一、 歌川国芳 8名 の作家が紹介されています。この順番は、生まれたのが早い人順ですが、実は又兵衛〜国芳まで約200年ほど生年に開きがあります。(基一と国芳は1歳違いですが)しかも、奇想の系譜の本には、白隠と基一は載っていないので、 あれ? と思う方もいるかもしれません。このたび、新版の奇想の系譜が出るとのことで、未確認ですが、その中では、紹介されているのかもしれませんね。個人的には奇想に 河鍋暁斎 も加えていいと思うのですが、どうでしょうか? 今や行列ともなる人気の若冲、国芳ですが、「 奇想の系譜」 の発表当時〜2000年頃は、並ぶほどの人気はなかったのではないでしょうか。2000年代初頭も、ここまで人が入ってなかったと記憶しています。ちなみに、私が子供の頃の美術の教科書を確認してみましたが、若冲は載っておらず、国芳が載っていました。しかも、「歌川国芳」ではなく「 一勇斎国芳 」という記載でした。 曾我蕭白「唐獅子図」 何故、今ここまで、奇想の系譜の作家たち、特に若冲や国芳が愛されているのか。若冲が存命当時は、 円山応挙 と人気を二分していたけれども、その応挙は今はそこまで人気がなく、弟子の長沢芦雪の方が人気がある。と、人気は時代により移り変わっていくものであることがわかりますが、何故、今、奇想が人気なのか。色々な方々がその辺は研究されていると思いますが、私なりに考えてみますと、例えば、若冲の異常に細かく、個性的すぎる鶏の描写が、デジタル世代の手仕事への礼賛に訴えるところがあるのではないか、と思ったり、又兵衛や蕭白のグロテスクな表現や、国芳の劇画的な表現やその笑いの精神が大変現代的であるからではないかと思ったりしました。蘆雪や白隠のおおらかな描き方は、ゆったりした、リラックス感溢れるもので、chillな感じ(笑)

太郎は戦場へ行ったー弓指寛治展@岡本太郎記念館

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青山にある、 岡本太郎記念館 へ久々に行ってきました。記念館では、 2月24日 まで、「 瞬間瞬間に生きるー岡本太郎とジャズー 」を開催中なのですが、その一角で、昨年岡本太郎現代美術賞の敏子賞を受賞した 弓指寛治(ゆみさしかんじ) の展示「 太郎は戦争へ行った 」展が行われておりました。 岡本太郎 が 1942年 から四年半もの間、戦争に従軍したことを題材にし、彼自身の平面世界を展開させた新作のようです。 弓指寛治 は ゲンロン 系の作家で、私は岡本敏子賞を受賞された展示を拝見しておりますが、彼はその時、形代(かたしろ)のような鳥のようにも見えるオブジェクトを画面に本当に大量に描き詰めておりました。今回は、死体にわいた蛆のようなものを画面に描きまくっており、死の世界を彷彿とさせる彼の作品世界は健在でした。 弓指さんの新作 そさらに、今回は「戦争」がテーマの1つ、ということもあってか、 ドクロ をモチーフとして描いておられましたが、これも太郎さんがメキシコに惹かれ、訪問し、インスパイアされていたこととも符合して、なかなか良いコラボ的な味わいが出ていたと思います。あとは、一部シェイプドキャンバスにしていたのも面白かったですが、もっとはみ出していてもよかったのかなと思ったりもしました。今後が楽しみな作家の1人かと思います。よければ青山へ散歩がてら行ってみてください。 岡本太郎のジャズレコードコレクション 太郎のアトリエ 太陽の塔がお出迎え〜 相変わらず楽しい場所でした! 写真撮影オッケーです。比較的小ぶりの展示会場ですので、青山散策の傍、是非どうぞ。 *開館時間*10:00~18:00(最終入館17:30) *休館日* 火曜日 (祝日の場合は開館) *但し2019年2月25日(月)は臨時休館* こちらに 特別割引券 あり(印刷して持って行くタイプのものです)  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ  ■-□-■-□-■-□-■-□ 前の投稿へ

顔真卿 王羲之を超えた名筆展へ

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書道 「だけ」の展覧会へ行くのは、多分生まれて初めてだったように思います! 思ったより、よかった!というのが素直な感想です。 書道の知識が浅いこともあり、音声ガイダンスのサービスを聴きながらまわってみました。 まずは、顔真卿による 楷書 をご覧ください〜。(千福寺多宝塔碑、752年)大変、力強く、明瞭で「これが楷書だぜ!!」という雰囲気にあふれる字ではないでしょうか?素人目ですが、美しく強い筆跡に打たれました。 顔真卿(がんしんけい、709–785) は中国の盛唐時代の書家であり政治家でした。高校時代に世界史で習った記憶があります。当時の山川出版から出ている世界史用語集を確認したところ、きちんとアンダーライン(きたなくて失礼〜)がひかれておりましたw ちなみに、この用語集の名前のあとにのっている「14」という数字は、どれだけの教科書に出ているか?という意味でマックスは確か15。顔真卿はかなり重要な人物とされています。 山川の世界史用語集より ガンさん ってすごい名前です。名前のインパクトがすごくて覚えていたのかも。でも本当は「 YAN 」さんと読むんですね!知らなかった〜。ガンとヤンではかなり印象が違ってきてしまいますが。。 顔真卿はルールを固守する融通のきかない人であり、それが原因で地方に11年間も左遷されたり、中央に戻りまた出世したり、また 安史の乱 を予測し、顔一族をひきいて立てこもりの攻防戦を繰り広げたりと、政治と密接にむすびついた人物でもありました。今回の展示では、中国の歴史の中では、「 政治と書 」がいかに深く結びついてきたかということもよくわかりました。 上の写真は、日本初公開、故宮博物院より来日した、 顔真卿、758年の「祭姪文稿」(さいてつんぶんこう) です。(*こちらは閲覧に30分ほど並びました!展示に行く予定の方はご注意ください) 最初は丁寧に書いていますが、そのうち筆致が荒く、感情が入り込んでいくかのように書きなぐるように変化していきます。 これは、 安禄山の反乱 により、顔一族の連絡役をつとめた 姪の顔季明(がんきめい) が反乱軍により殺害された、その死を悼むための文章だそうです。 顔真卿の熱い性格が伝わる書だと思います。 この展示では、顔真卿だけではなく、 篆書、隷書、楷

民藝 Another Kind Of Art展 〜21_21 DESIGN SIGHT

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日本民藝館に3年ぶりに行ったから、という訳ではないのですが、深沢直人さん監修の民藝の展覧会へ六本木の21_21 DESIGN SIGHTへ行ってきました。展示は主に、 日本民藝館 の収蔵品からセレクトされたのだそうです。 おもしろかったです! 展示にキャプションはないのですが、展示一覧の用紙があるので、何かは参照できます。「直観」でみるだけに留めておくこともできましたが、私は見終えたあとに、何かをざっと一覧で確認しました。 another kind of art とは、染色工芸家の 柚木沙弥郎 (ゆのきさみろう)が言った言葉に端を発するそうです。 以下展覧会サイトよりーー 96歳の現在でも意欲的に活動を続ける柚木沙弥郎から「僕が求めるのは、染色家という肩書きや民藝というカテゴリーじゃない。『Another Kind of Art』なんだ」という言葉を聞いたとき、私は思わずハッとした。柳が提唱した「民藝」も、実はそのものづくりに携わる人々の生き方を示しているのではないだろうか。 実直な創作者たちは、とかくカテゴライズされることを嫌う。型にはめられそうになると、思わずそこからはみ出したくなってしまう。形式や様式にしばられない飄々とした態度。一定の仕上がりを求めない自由さが民藝にはある。 ーーーーー カテゴリー化は、作品を1つの枠から見ることになるので、それは批評する側、鑑賞者からは便利な面もあると思います。ですが、それは枠に当てはめて作品を考えることにもなり、自由に捉えることを妨げることにもなるのではないでしょうか。もっと、創造は自由でいい、そう思います。 とはいえ、「民藝」というのも1つのカテゴリーであるには違いないのですが。。なかなか深い展覧会のタイトルだと思います。 さて、展示そのものですが、コンパクトにまとまっていて、作家の普段を取材した映像も個人的には楽しめました。 たっつけ(袴の一種) 日本のものでは、卵の殻を重箱にはりつけた民芸品(螺鈿細工かと思いました)や、刺繍?をほどこしたかのような、ちょっとしたサルエルパンツのような衣装(たっつけ、袴の一種)や、瀬戸焼の大胆な動物デザインの蚊遣り入れなどなど、くすっとできる愛らしいものからかっこいいものがたくさんあり、楽しい展示でした。 深沢さんが、作り

柳宗悦の「直観」美を見出す力へ〜日本民藝館

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東京の駒場にある、 日本民藝館 へ久々に行ってきました。前回行ったのは、2016年の1月でしたので、3年ぶりということになります。日本民藝館の佇まいの美しさには、そこに入るだけでじわじわと打たれてしまうものがあり、再訪してしまいたくなる何かがあるように思います。 さて、本題の展示ですが、今回は、収蔵品の中から「直観」するにふさわしい品々が展示されており、キャプションは一切ありません。展示品目一覧の紙も配られず、見終えた最後に 柳 宗悦(1889-1961) の「 直観について 」の文章が記載された用紙が持ち帰り用に置いてあるだけの演出的ともいえる展覧会となっていました。併設展との区分が若干わかりにくかったのですが、まあそれもよく見たらわかるかなと思いました。 上の着物もキャプションはありませんでしたが、同じ網目柄の手ぬぐいを持っていて、なんとなく日本のものかなと思いましたが、ハンバーガーのような模様は何かわかりませんでした。正解は多分この展覧会趣旨によればなくてよく、自由に想像してかまわないということなのでしょう。 ------------ 直観に在るとは、「うぶのまま」で受け取り「うぶのまま」で見る事である。 美しさの理解に、直観がかくも必要となるのか。それは美しさが言葉や判断に余るものだからである。(中略)その理解には言葉を超えた理解、即ち知的判断に限られない洞察が、内に働かねばならない。 (直観についてより) ------------ 柳の言う直観は「子供のような心」で見ることのようにも思えます。どうしても人は作品がどこでつくられたのか、技法は何か、時代は、といったことを頭の片隅で考えてしまいますが、作品をそのような知識なく、純粋に子供のような心で見ることを思い出せてくれる展覧会でした。 柳宗悦の「直観」美を見いだす力 2019年1月11日(金)~3月24日(日)  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

終わりの向こうへ:廃墟の美術史

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会期終わりまぎわのレポで失礼致します。 昨年末より開催されていた 廃墟 をテーマとした 渋谷区松濤美術館 での展覧会へ行ってまいりました。 廃墟といえば、私が知っていたのは、19世紀のイギリスは ヴィクトリア朝 で廃墟を愛好する人たちが集い、廃墟見学ツアーなどが催されていたことがあるというお話と、現代では廃墟の写真集などが世界各地で作られたり、日本だけではないかもしれませんが、「廃線」とという鉄道ファンのカテゴリーもあるほどで、廃れたものへのノスタルジックな感情は洋の東西を問わず、1つの美の範疇として定着している感があるということくらいでした。 とまあ前置きはそのくらいにし、この展覧会は廃墟の美術史とあるように、廃墟の事始めからスタートし現代の作家たちにそれがどう継承されているかを時系列に見ることができる小ぶりながらも歴史を見ることができる展覧会でした。 元祖廃墟作家 は、 シャルル・コルネリス・ド・ホーホ  (1600?-1638)であるとされているようです。17世紀オランダ絵画黄金期のハールレム出身の風景作家で、画面には、廃墟とともに人物もでてきます。この頃はまだ廃墟のみ、という描き方ではなく人間も描かれていたのが特徴かもしれません。 さて、次に紹介するのが、 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ (1720-1778)です。個人的に大変興味がある作家です。建築家でもあったそうです。ローマの細密な景観を描いた版画が有名です。(写真下がローマの古代遺跡のエッチングです) その次は、フランスの ユベール・ロベール (1733-1808)です(一番最初の写真では下)彼はローマで学んだこともある、フラゴナールとも親交があった作家です。**フランス革命**のギロチンをなんとか逃れ、ルーブル美術館での美術品管理を手がけた人物としても有名だとか。優美な空想的風景画で知られています。国立西洋美術館等では2012年にロベールの展覧会「時間の庭」展がありました。 話がそれますが、私がよいなと思っている廃墟の写真集は、**NYのエリス島**で撮影された写真集です。買ってはいないのですが、あってもいいなと思っている本の1つです。 現代作家では、 デルヴォー、マグリット、池田龍雄(前期展示のみ)、大岩オスカール、野又譲、元田久治 が紹

ムンク展―共鳴する魂の叫び 都立美術館

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1月20日まで開催された ノルウェー を代表する作家 「 ムンク 」の展覧会 へ行ってまいりました。ムンクの美術館はオスロにあり、丘の上の見晴らしのよい美術館を建設中とのことでその期間にどうも日本に来てくれたようです。 さて、ムンクは見に行くの?と若い油画系の若者に聞いたところ 「行かないといけませんかね?」 とのこと。「叫び」の絵画が有名すぎて、中には辟易して行く気が起きないという人がある程度いたのかも、と思いました。ところが会場は超満員!!「 ポケモンと叫びのコラボ 」もあったりして、大盛況という感じ。。ちょっと入るのをためらって帰ろうかと思いましたが、なんとか入場できました。 で、 私、そういえば、ムンクをまとめて見たことあったな、 と徐々に思い出してきまして、帰宅後、何と無く集めている感じとなっている訪問した展覧会のポストカード集を見て見ました。 1992年の「ムンク 画家とモデルたち」 というムンクとモデルたちの関係に注目した展覧会でした。おぉぉぉ、、27年前ですわ見たのは、、買えなくて図録持ってないけどまあまあ内容を覚えてるから不思議です。 27年前に買ったポストカード 今回は、そういう「スキャンダラスな男性作家とモデルの関係」という雰囲気はあまりなく、しょっぱなから 元祖セルフィー 作家としてのムンクということで、晩年に至るまでの彼の 自画像 が展示されていて、おお!これは現代的アプローチ!いいね!と思ったのでした。 ムンクは肉親がどんどん病などでなくなる中で、自分も死ぬんじゃないかという思いに取り憑かれてしまい、それが作品にも大いに反映されているのですが、、結果、それが飯の種となり、さらに一人長生きしたという。。。なんと人生は皮肉なのでしょうか。 今回購入したポストカード 27年前に買ったポストカードと見比べてもらえば、なんとなく展覧会って、同じ作家を扱っていてもアプローチが違うと全く違う展覧会となるということがわかってもらえるかも?と思います。そしてそのアプローチには時代も反映されているという。。 ムンク展 特設サイト  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブ