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5月, 2016の投稿を表示しています

生誕300年記念 若冲展 - 東京都立美術館

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会期:2016.4.22-5.24(現在は終了しています)ー全国への巡回は、なしとのことです。 またまた、終了展示のネタで恐縮です、、実は、会期終了日にギリギリで駆け込むことができました。前売りをかなり前から購入していたのですが、並ぶと聞き、逡巡する間に、最長5時間20分待ちの記録が出、もう諦めよう!と思いましたが、最終日に展覧会ツイッターの情報を見つつ、だめなら帰ろうと思いながら行きました。そうしましたら、スタッフの皆さんが塩飴やお茶、団扇などを配って、並んでいる皆に配慮をしているのを見て、これなら、と思い切って並びました。1時間程並んで、館内へ。勿論、中はガラスケースに近づくのは難しく、そのケース前の人もなかなか動きません。皆さん、どちらかと言えば水墨より、カラーの作品に並んでおられました。私は、昔、動植綵絵は昔じっくりと観ましたし、プライスコレクション展なども見ておりましたので、なるべく水墨の方を中心に回ってみました。 伊藤若冲(1716-1800) 「若冲と蕪村」展でも見た 「乗興舟(じょうきょうしゅう)1767」( 千葉市立美術館の展示でも展示された作品だと思います)こちらを、もう一度見たいと思いました。拓版画という、一種の版画で作られています。相国寺の大典和尚と淀川下りをした際の記録を元に作成。 不思議なのは、空が黒く、淀川部分が灰色。なんとなく、図と地が反転しているかのような、かわった作品 だと思うのです。言って見れば、ネガのような感じといいますか。。。若冲作品は、かなり手の混んだ独自の技法に基づいていると聞きますが、この作品もそうですね。この時代でいってみれば大変モダンな作品は珍しかったのではないかと思います。京都での人気を二分したという年下の応挙が先に、 淀川を描いた巻物「淀川両岸図巻」 を完成させており、それへの挑戦だったのではないか?という説もあるようです。(なんだか負けず嫌いな一面が伝わってきますね)

東京写真月間ー6月1日は写真の日

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都内60カ所のギャラリーで開催中のイベントの紹介です。写真関係のイベントはパリフォトが有名と思いますが、東京でも開催されています。最近ではKYOTOGRAPHの開催が京都でありましたし、大阪写真月間も6月から開催されるようです。 東京都内各所で開催されていますし、全ての箇所を回るのはとても無理ですが、幾つかピックアップして回れたらと考えております。ということで、さっそく先週行ってきたのは、 表参道画廊の「幻の海洋写真家・木滑龍夫の世界 」 です。この1つ前の投稿で、 大原治雄 の事を記事にしましたが、その関連で、この 木滑龍夫(きなめり たつお 1897-1941東京生) という作家の展示に目がとまりました。本業は船の無線技師(船乗りといってよいのか分りませんが。。)であった木滑は、そのうち写真を始め、荒れ狂う船上で撮影をし続けたというアマチュア写真作家だそうです。そして、認められはじめた矢先に、海で遭難死してしまうと。。大原治雄もそうですが、大自然を相手にした職業の厳しさがプリントからも伝わる、ものすごい波の臨場感でした。 プリントはヴィンテージだそうです。詳しくは聞けていないのですが、セピア調色なのか、退色しているのか、薄い茶色のトーンのプリントでした。 木滑龍夫の世界展 東京写真月間の公式パンフレットは、都内各所の画廊で入手できます。 公式サイト   パンフレットより情報が少ないように思いますが。。見間違いでしょうか。 また、パンフに記載間違いがあるそうです。 東京工芸大学「写大ギャラリー」の展示は、W.H.フォックス・タルボット写真展 「自然の鉛筆」 だそうです。(あらっ?こちらは「タルボット」表記なのですね?京都で行なわれた展示では、トルボット、赤々舎より刊行の書籍もトルボット。いったいどちらでいくのでしょうか。昔の表記はタルボットでしたけど。)是非この機会にお出かけ下さい。 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

大原治雄写真展 ─ ブラジルの光、家族の風景

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ブラジル移民、農民として生きた写真家、大原治雄(おおはら はるお1909~1999 高知生ままれ)の初の日本国内での展覧会です。 2016年4月9日(土)~6月12日(日) 高知県立美術館 2016年6月18日(土)~7月18日(月・祝) 伊丹市立美術館 2016年10月22日(土)~12月4日(日) 清里フォトアートミュージアム この写真作品がすごいのです。。ブラジルに渡り、自分の結婚式の際に始めて写真に接した大原は、写真に魅了され、苦しいコーヒー栽培農家の傍ら、独学で写真を始めたそうなのです。ほぼ全てうつっている大地は、自分がジャングル状態から開墾した土地!そして被写体は自分の子供がほとんど。空以外は全て自分が作り出したものが被写体という、身近なものを撮影しているのにもかかわらず、スケールが実に大きいのですね。。強い力のある写真だと感じました。 決定的瞬間を撮影したというよりは、セッティングして撮影した写真が多いそうです。子供達を撮影した写真は、植田正治に似たセンスを感じるものもあります。大原は、まず移民の農民であったという点が何よりすごいと思います。娘さんのインタビューを見ましたが、相当苦しい生活だったのに、自然の中の美を見出す天才であり、どこかそれを愛でる心の余裕があったそうで、我が父ながら凄い人だと思ったそうです。 写真集が出ています。気になる方は是非検索してみて下さい。 追記: 大原治雄の伊勢丹での展覧会に行ってきた事を後日書きました。 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

複製技術と美術家たちーピカソからウォーホールまで

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クルト・シュヴィッタース-メルツ絵画1C二重絵画 横浜美術館にて開催中の富士ゼロックスと横浜美術館のコレクション展「 複製技術と美術家たち 」の展示へ行って参りました。版画から、写真、ゼログラフィーと呼ばれるコピーアートの一種まで、立体作品もありました。ベンヤミンのテクストをベースにした解説も分り易く、アプリをDLDすれば、なんと、 音声解説は無料 で聴く事ができます。

BankART Open Studio2016へ

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2016 5.27-6.5まで、11:00-19:00、横浜の馬車道にある、BankARTにて、今年のレジデンス作家の公開スタジオが開催中です。開発好明、タカノ綾などの有名作家(年間レジデンス作家)から、若手まで、平面からパフォーマンスと幅広い旬な作家と、これからの作家のスタジオを観ることができます。各種イベントがあるようですので、詳細はウェブサイトをご覧下さい。 公式サイトへのリンク 知人のレジデンス作家を訪ね、初日に行ったせいでしょうか、まだこれからの雰囲気が少々ありましたが、何かが生まれる場所を観るのはとても楽しいものでした。会期は1週間と短いのですが、隣町の 横浜美術館では、「複製技術と美術家たち」展が6月5日まで開催されていますので、併せてどうぞ。 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

美の祝典2ー水墨の壮美

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出光美術館開館50周年記念 国宝伴大納言絵巻、10年ぶり公開。12日までは、中巻の公開。 2016年5月13日(金)~6月12日(日)/月曜休館 東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階(出光専用エレベーター9階) アクセス詳細 展覧会の展示概要ページへのリンク またも12日ギリギリな更新と相成り、申し訳ないです。日本四大絵巻の1つである 伴大納言絵巻 が公開されています。とはいえ、本当のこの絵巻物のハイライトは、やはり上巻(公開済)の火事のシーンではないかと思いますが、 異時同図法 による、同じ画面に異なる時間のコマが描かれた、興味深いシーンを観る事ができます。 異時同図法による表現 また、個人的には、出光美術館は、外国の友人を案内すると喜ばれるのでは・・と思います。窓からの眺望が素敵ですし、無料でお茶も頂けます。平日であれば、混雑もそこまでなく、くつろいだひとときを過ごして頂けるのでは、と思います。(入館料が必要となりますので、ご注意ください) 伴大納言絵巻ですが、平安時代の作品で、歴史の中で多分何回も巻かれ、紐とかれを繰り返したからでしょうか、かなり地の部分の劣化が見えてとれると思います。。私が学生時代に古本屋で購入した、やまと絵の本にも同じような、ひび割れたかのような状態の写真が載っておりましたので、今に始まったことではないとは思いますが、状態が心配されました。そういう意味でも、貴重な公開だと思いました。 さて、「水墨」がテーマでもある今回は、 牧谿、玉澗から始まり、雪舟、等伯、与謝蕪村、池大雅 など、ポイントを抑えた作品が展示されておりました。作品数は多くはないですが、見応えのある展示でした。 「美の祝典 第3期 江戸絵画の華やぎ」は、6月17日(金)〜7月18日です。 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

フランスの風景 樹をめぐる物語 - コローからモネ、ピサロ、マティスまで

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-------- 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階) 2016年4月16日(土)より、6月26日(日)まで 休館 月曜/開館時間 午前10時-午後6時、金曜日は午後8時まで(入館は閉館30分前まで) 観覧料 一般:1200円(1000円)、大・高校生:800円(650円、シルバー:1000円 、中学生以下:無料、障害者:無料、※障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者手帳)の提示によりご本人とその介護者(1名まで)は無料。※( )内は20名以上の団体料金 および前売り料金。 主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、日本経済新聞社 オフィシャルサイトへのリンク -------- 楽しみにしていた、 「フランスの風景 樹をめぐる物語」 へ行ってきました!風景画は私の最も好きな絵画テーマの1つです。 ロマン派からフォーヴ までの仏の風景画を集めた展覧会です。ターナーやコンスタブルの英国風景画が仏サロンで紹介され、バルビゾン派たちが戸外で自然を描く様になるまでは、風景画といえば、仏では「習作」扱いで、絵画のテーマとしては下位の存在でした。そして、絵画といえば、室内のアトリエでの作成が主で、神話や、肖像画の方がランクが上だったのですね。そういう意味では、西洋人が風景画を発見するのには、結構時間がかかった訳で、中国の絵画が山水などを主題の1つとして扱っていたことを考えると、東西の文化の違いを感じます。話が少しそれますが、「青のパティニール」として有名な16世紀のベルギーの作家ヨアヒム・パティニールこそ西洋風景画の祖だ、とする石川美子さんの本が2年前に出ました。bunkamuraでの展示も記憶に残っています。ですが、「戸外で」描き出したのは、バルビゾン派が最初なのですね。 展示は、美しい作品が多々出品されていました。ドニ、セルジェなどナビ派の風景画は独特でやっぱり好きです。個人的には、フェリックス・ヴァロットンの「オンフルールの眺め、朝」が観れてうれしかったです。ヴァロットンの絵は、やはり観てすぐ判別がつきます。強い作家性がありますよね。あと、ピサロは四男まで画家で、息子たちの作品も出ていたのが興味深かったです。ピサロはやっぱり絵がうまいですね!とベーシックな所で感

松濤美術館 頴川美術館の名品展へ

会期 2016年4月5日(火)〜2016年5月15日(日) 既に終わった展覧会のお話で恐縮ですが、渋谷の松濤美術館で、兵庫は西宮の頴川美術館(えがわびじゅつかん)の名品が30年ぶりに東京で公開とのことで行って参りました。 オフィシャルサイトへのリンク 土佐派の絵画が観れる!と思い期待して出かけましたら、展示入れ替えで観れませんでした!伝能阿弥の「三保松原図」、長沢蘆雪の「月夜山水図」も前期で観れず。いつもしてしまうこの失敗、、、展示期間のチェックを怠っていました。残念。展示入れ替えはやめてー(笑)と思いつつ、空間の問題もあるのでしょうね。そういう意味では、5月22日まで開催されている、 奈良国立博物館の「信貴山縁起絵巻」 は奇跡の(史上初!)全巻展示です!!行きたくてしょうがなかったのですが、、残念無念。。。関西の方で、日本画が好きな方は行かれてはいかがでしょうか。個人的には、好きな絵巻ベスト3に入ります。やまと絵の真の傑作だと私は思います。 ーーと話がそれましたが、頴川美術館の名品展、土佐派は逃しましたが、すばらしい作品の数々で、頼山陽の山水画、錦絵の浪速百景シリーズなど、これは関西ならではの名収蔵品ではないか?と思わせる作品が数々あり、本当に名品展でした。展示の区分は、やまと絵、漢画・水墨画、南画、写生画、近代絵画、工芸と分類されており、美術史的にも追えるようになっておりましたが、一部、水墨画か南画のコーナーに別の3幅の作品が混ざっており(詳細失念しました。。)、疑問に思い質問したところ、どうしても目立つ場所に展示したいという事で、一部区分が混ざっていた箇所がありました。まあ、明らかではあったのでよいかとは思いますが、お伺いするまで、若干意図が読めませんでしたが、単純に観る分には関係ない話ですね。。

安田靫彦展 Yasuda Yukihiko A Retrospective

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安田靫彦(1884‐1978)の40年ぶりの大きな回顧展ということで、行って参りました。会期は15日までとあと僅かとなっています。東京は竹橋の近代美術館にて開催中です。初公開の作品を含め、100点超の作品数が展示されており、大変充実した内容となっていました。 安田靫彦展、特設サイトへのリンク 安田靫彦は、東京・日本橋生まれ、明治〜昭和を生きた日本画家です。菱田春草は10歳上ですが、1911年(明治44年)に亡くなっていますので、94迄生きた安田靫彦は、戦後も高度経済成長も体験した作家で、スパンの長い作家生活を送った一人だと言えます。 展示は子供の頃の作品から始まります。10代の頃から、大変な画力を持っていたことが分ります。大変細かく、写実に近い感覚で描いたものもありましたが、年とともに、次第に対象物のエレメントだけを抽出して描き、無駄のない空間を作り上げていく画風に昇華していったように思いました。そして、安田靫彦といえば、歴史画で有名ですが、子供の頃から、やはり歴史を主題にした絵画を描いているのには驚きました。今で言う所の「歴史おたく」だったのかもしれませんね。 黄瀬川の陣より さて、ちらしにもなっているこの絵画、頼朝と義経を描いた作品で、 「黄瀬川陣(きせがわのじん)〈重要文化財〉」 という作品です。(本来は、右隻と左隻に分かれた大きな作品)義経はまるでボクシングをしているような構えです。「いざ、竹橋」「待ちかねたぞ」のキャッチコピーも効いていてよかったと思います。 右が頼朝ですが、これは、有名な 京都神護寺の「伝源頼朝像」 を参考に描かれているのが観てすぐに分ります。私の世代では、歴史の教科書に頼朝として記載されていたこの像は、足利直義の肖像画である新説が出てからというもの、頼朝ではないという説が有力のようですね。。このように、歴史画は新説が出てくると整合性が狂うこともあるのは、なんとも興味深いです。 伝源頼朝像ー神護寺 安田靫彦の静物画も展示されていました。ガクアジサイのある卓上を描いた。「窓」(1951)、クレマチスのある静物画「室内」(1963)はどれもみずみずしい色合いで、もっと安田の静物画を観たいと思いました。 左「窓」、右「室内」 質、量ともに圧巻の展示です。歴史好きな方にも、是非お勧めします。

ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞

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Bunkamura ザ・ミュージアム 2016/3/19(土)~6/5(日)※会期中無休 10:00~19:00(入館は18:30まで) 毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで) 神戸、名古屋へ巡回 2016/6/18(土)~8/28(日) 神戸市立博物館 2016/9/10(土)~12/11(日) 名古屋ボストン美術館 展覧会ウェブサイト 前から思っていたのですが、アメリカにある日本美術の作品はなんだか保存や修復状態がいいような気がします。状態がよいものしかお里帰り展示されないのかもしれないし、あちらの保存場所が日本に比べて設備がよいのか、熱心に修復しているのか(表装が奇麗なものが多いように思います。。)、はたまた偶然か私には分りませんが、量、質ともに最高ものと数が里帰り展示されていたように思います。貴重なコレクションを観れ、よかったと思いました。 歌川国芳(1797-1861)、歌川国貞(1786-1864)。江戸時代後期の二大浮世絵作家な訳ですが、「俺たちの」国芳、「わたしの」国貞とした訳は、一目瞭然、武者絵の国芳と、美人画、役者絵の国貞という意味だと思います。国芳と言えば、猫好きには有名な愛嬌のある猫の絵でも有名ですが、十八番は武者絵で、スペース一杯、ぎっちりと図を描き、三枚続きのものは、まるで漫画の見開きのように、三枚にわたって被写体をズームして肉迫する臨場感のあるスペクタクルを描き上げる作家なのですね。背景は、漫画に影響を与えたとも言われる、集中線のような表現や、効果線の使い方がとても興味深いです。国芳はとても絵が上手く、構図の取り方なども巧みですばらしい作家だと思いました。武者絵だけではない幅広さがあるのも魅力です。(この展示とは直接関係はないですが、最後の浮世絵作家と言われた月岡芳年は孫弟子にあたりますが、芳年のスペクタルな作品群はやはり、国芳の強い影響下にあるのがこの展覧会を観ても分りました。) 一方、国貞は、美人画、役者絵な訳ですが、国貞は相当歌舞伎を観ているし、好きなんだということが展示を観てよく伝わってきました。それというのも、七代目団十郎と幼なじみであったという事もあるのかもしれません。団十郎が出てくる錦絵は、たまに展覧会で拝見しますが、ほぼどの代の団十郎も目千両という事に驚きます。