安田靫彦展 Yasuda Yukihiko A Retrospective

安田靫彦(1884‐1978)の40年ぶりの大きな回顧展ということで、行って参りました。会期は15日までとあと僅かとなっています。東京は竹橋の近代美術館にて開催中です。初公開の作品を含め、100点超の作品数が展示されており、大変充実した内容となっていました。

安田靫彦展、特設サイトへのリンク

安田靫彦は、東京・日本橋生まれ、明治〜昭和を生きた日本画家です。菱田春草は10歳上ですが、1911年(明治44年)に亡くなっていますので、94迄生きた安田靫彦は、戦後も高度経済成長も体験した作家で、スパンの長い作家生活を送った一人だと言えます。

展示は子供の頃の作品から始まります。10代の頃から、大変な画力を持っていたことが分ります。大変細かく、写実に近い感覚で描いたものもありましたが、年とともに、次第に対象物のエレメントだけを抽出して描き、無駄のない空間を作り上げていく画風に昇華していったように思いました。そして、安田靫彦といえば、歴史画で有名ですが、子供の頃から、やはり歴史を主題にした絵画を描いているのには驚きました。今で言う所の「歴史おたく」だったのかもしれませんね。

黄瀬川の陣より

さて、ちらしにもなっているこの絵画、頼朝と義経を描いた作品で、「黄瀬川陣(きせがわのじん)〈重要文化財〉」という作品です。(本来は、右隻と左隻に分かれた大きな作品)義経はまるでボクシングをしているような構えです。「いざ、竹橋」「待ちかねたぞ」のキャッチコピーも効いていてよかったと思います。

右が頼朝ですが、これは、有名な京都神護寺の「伝源頼朝像」を参考に描かれているのが観てすぐに分ります。私の世代では、歴史の教科書に頼朝として記載されていたこの像は、足利直義の肖像画である新説が出てからというもの、頼朝ではないという説が有力のようですね。。このように、歴史画は新説が出てくると整合性が狂うこともあるのは、なんとも興味深いです。
伝源頼朝像ー神護寺

安田靫彦の静物画も展示されていました。ガクアジサイのある卓上を描いた。「窓」(1951)、クレマチスのある静物画「室内」(1963)はどれもみずみずしい色合いで、もっと安田の静物画を観たいと思いました。

左「窓」、右「室内」

質、量ともに圧巻の展示です。歴史好きな方にも、是非お勧めします。