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4月, 2018の投稿を表示しています

いかにして建築が音楽を進化させたか?ー美術も同じか?

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興味深いTED TALKがありましたので、シェアしたいと思います。 デビッド・バーン:いかにして建築が音楽を進化させたか(日本語字幕付き) David Byrne デビッド・バーン は、 トーキングヘッズ というポップバンドを昔やっていました。その後、映画「 ラストエンペラー 」で 坂本龍一 と一緒にサウンドトラックを作ったりしたところまで知っていましたが、その後も音楽制作していたんですね。しかも、ウィキのおかげで、彼が実は ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン (著名人をたくさん輩出している、アメリカの美術系大学の中のトップスクールと聞きます)出身でアメリカに住むイギリス人だったということを今更知りました。 で、本題のTED  TALKですが(注意:ネタバレあり)、ハコによって音楽はその場所に適した形で発展、変化してきたという内容で、納得です。音楽だけではなく、美術も同じだと思いました。そして、その「発表する環境」に合わせて制作するというのもありだとバーンは言います。美術の場合も、美術館、ギャラリー、またはアートブックに載せる際、などなど、発表する場所により形態を変えることはありでしょう。土地によってもそれは違うとも思います。例えば、アメリカのごく限られた都市部を除いては、家屋は日本より大きく、その場合、そこにあうアートを考えると、制作場所も広いし、当然日本で制作するよりも大きめのものが好まれる、とか大きなものを展示するキャパがある、とか、そういうことは十分に考えられます。 加えて、近年、MP3で鑑賞するというのに合わせて発展してきた音楽もある、とバーンは言います。周波数帯がレコードとは違うのでその音域にふさわしい音楽が好まれ、作られると。美術も、モニター越しにまず見る機会が増えていると思います。インターネットデータベースにアクセスし、色々な美術館の作品が自由に鑑賞できるようになってきています。そんな中、実際に実物を見たときに、あれ、思ったより色が浅い、シャープネスが低い、と思ったことはないでしょうか?私はあります。つまり、photoshopなどで、ネット上で鑑賞するのにふさわしい形に整えられているのと、色の表現がモニターと絵の具は違うというのものあると思います。そんな中でモニターで見るのに最適化した

映画「さすらいのレコード・コレクター 10セントの宝物」

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原題:「Desperate Ma Blues」 2003年の映画です。 現在、 新宿K's Chinema にて公開中です。 全国を巡回予定。詳細は こちら をごらんください。 この映画は、「すごいアメリカ人発掘」ドキュメンタリーの流れを汲む作品だと私は思いました。 海外版のフライヤー 海外版のデザインの方が私は好きです。タイトルもすごく違いますね。日本版は「ほんわか」してますね。 「ハーブ&ドロシー」「ソール・ライター」「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」「アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー」 などの近年公開された アメリカ人のドキュメント映画 と似た匂いがします。どれも観ましたが、の 「さすらいのレコード・コレクター 10セントの宝物」 は「 鬼コレクター 」という点では、「ハーブ&ドロシー」に似ていますが、音楽を扱っている、という点と、ジョー(このドキュメンタリーの主人公)は新しいものではなく、 古いブルース、カントリー、ブルーグラス のレコード(しかも、LPではなくSP版)を集めている点が特徴的です。 SP版 とは、天然樹脂などでできた「 78回転 」のレコードで、 LPレコード (プラスチック製、 33回転 )ができる前、およそ1940年代より前のレコードのことだそうです。ジョーは、アメリカ発祥の黒人音楽であるブルーズや、カントリー、ブルーグラスといった音楽が、商業主義に飲み込まれていってしまう前、自由に純粋に演奏されていたこれらの音楽が録音されているSP版のみを集めていて、その数は、 25000枚 !だそうです。 故人となった夫人も、近くに住む娘も父のコレクションに理解があり、コレクターとしてはかなり幸せな部類の人ではないかと思います。しかも、ジョーは、コレクションを 「綺麗に」 びっしりと並べています。ぐちゃぐちゃのごちゃ混ぜ!ではないのです。今まで見たドキュメンタリーでは、整頓状態がそこまではよろしくないコレクターが多かったように思いますが、ジョーは違うんですね。 SP版はカビや衝撃に弱い ので、きちんとしてないと保存できないという面もあるとは思いますが、性格が出ていて面白いなと思いました。 ロバート・ジョンソン サン・ハウス ジミー・ロジャーズ ジミー・マーフィー などな

浮世絵モダーン -町田市版画美術館

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町田版画美術館 は、開館30周年だそうです。それを記念して、この「 浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして ・・・ 」展を開催しているのだそうです。 伊東深水「対鏡」1916年 以前も、 町田版画美術館への行き方についての投稿 をしましたが、何故かグーグルだと病院の前を通る道を推奨されるんですよね。で、、今更知ったのですが、 町田版画美術館は、会期初日は無料なんですね! 嬉しい限りです。遠方の方にはなかなか行きにくい場所かもしれませんが、遠足気分で行かれることをお勧めします。 この展覧会は、大正初期に登場した「 新版画 」とは何か?がテーマです。「新版画」はいつどこで命名されたのかというと、 版元の渡辺庄三郎 が明治末期に海外輸出用の版画を作った際に生まれた名称だそうです。(ちなみに、渡邊さんのお店は、今現在も銀座にあります。「 渡邊木版美術画舗 」です。私も行ったことがあります。手頃なお値段の浮世絵版画もあるのでお勧めです。道に面していて、多少は気軽に入れると思います。少なくとも、メゾンエルメスよりは入りやすいと私は思いました。) 浮世絵版画は、実は、明治以降、石版画、印刷術、写真など他の複製技術により落ち目となっていたそうです。そこへ浮世絵などに興味があって来日した西洋人作家の フリッツ・カベラリ の作品を、渡辺庄三郎が 樋口五葉 に参考として見せ、洋画風の新版画が生まれるきっかけとなります。一方、洋画の流れを汲まない、日本画系統の新版画も同時期に発展したそうです。そしてそれらは混ざり合い、新しい表現となっていきます。 有名どころだと、近年再評価がすすむ人気作家は、美しい日本の光景を描く 川瀬巴水 、海外の景色も描く「山」に定評のある 吉田博、 余白に美を感じさせる 小村雪岱、 そして妖艶な女性画と異国情緒が混ざり合った 橘小夢 といった面々でしょうか。この人気作家たちは、この展覧会でももちろん見ることができました。( 小村雪岱 と 橘小夢は、 展覧会を見逃していたので見れてラッキーでした。橘の版画は、なんとも70年代の少女漫画家が手本にしたかのような、怖美しさが満載でした!) 小早川清-近代時世粧ノ内ーほろ酔ひ/1930年 小早川清 は、鏑木清方門下の日本画家です。私は新版画の中では、小早川清が好きです。

ルドンー秘密の花園 FLORE D'ODILON REDON -三菱一号館美術館

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三菱一号館美術館 で5月20日まで開催中の、『 ルドンー秘密の花園 』展へ行って来ました。 オディロン・ルドン(1840-1916年) は私の好きな西洋画家5人に入ります。ルドンの絵画といえば、何を思い浮かべるでしょうか。グーグルでイメージ検索をしてみると、半分ほどが、一つ目の巨人、顔のある蜘蛛、目玉の絵といった、ホラー的なイメージが出て来ます。残り半分が、暖色の花のイメージでした。今回は、その「花」にスポットを当てた展覧会で、ハイライトは ドムシー男爵の城内装飾(食堂) の再現コーナーであると思いました。 グラン・ブーケ 1901年/パ ステル 上の「 グランブーケ 」は大変大きな作品で、これは三菱一号館の所蔵作品で、今までにも観たことがありました。この作品はもともとドムシー男爵の城にあったそうです。 1840年に生まれたルドンは、モネ、ロダン、ゾラと同い年 だそうです。そうそうたるメンバーが同期ですね。 セザンヌは1歳年上の1839年生まれ。写真のゲダレオタイプが発明されたのも39年、翌40年は中国でアヘン戦争が始まった年だそうです。 ルドンは、エッチングなどの版画で画業のスタートを切ります。この時期に、有名な顔のある蜘蛛の版画などが作成されます。そして、次に、色彩豊かな油彩の作品が認められ、その頂点にドムシー男爵の城内装飾の仕事があるという展示構成の流れになっていました。 ルドンの絵の魅力は、花の場合は、色彩の豊かさ、そして時に出現する(奇妙な、もしくは幻想的な)余白にあるように個人的には思います。ルドンには、傑出した画力が初めからあるようには思えないのですが、その不器用とも思える画風が、やはりルドン以外にはない唯一無二のスタイルを生んでいるように思います。 この展覧会は、 ルドンの「花」に焦点を当てた世界初の展覧会 だそうです。鑑賞の価値は大いにあると思います。 「 オジーヴの中の横顔 」制作年不詳 今回購入したものは、上の写真のポストカードと缶バッジです。缶バッジに隠されていますが、絵の右側には植物が描かれています。今回、ルドンのキャンバスバッグなんて滅多に手に入らないなあと思いつつ、迷いましたが買いませんでした。  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。よかったらクリック

北斎と広重ー富嶽三十六景と東海道五十三次 - MOA美術館

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そういえば、北斎の 富嶽三十六景 も、広重の 東海道五十三次 もバラバラでしか見たことがないな、通しで見たいな〜、と思って熱海のMOA美術館まで行ってきました。週末でしたが、なかなかの賑わいでした。展示ケース前で次の鑑賞を待つ、ということがありました。MOA美術館は、 杉本博司 による監修改装後、初の訪問でしたが、建物や内装もパーツが杉本好みで渋さ満載!大人向けの高級感あふれるシックな内装でした。 北斎 富嶽三十六景より「武州玉川」 北斎の富嶽は、どれも傑作でハズレがないと思います。全46枚で、ペルシャンブルー(ベロ藍)が使われたことでも有名ですが、ブルーのグラデーションが確かに美しかったです。北斎72歳の時の作品で、さすが画狂老人と思わずにはいられませんでした。 広重 保永堂版 東海道五十三次より「箱根」 広重の東海道五十三次は 3つのバージョン があるそうです。展示されていたのは、一番有名な 保永堂版(1833-34)- 55枚 でした。遠近法が用いられたことでも有名だそうです。広重は実際に自分で東海道を旅しています。ネットを検索したら、東海道を何回かに分けて歩く、という旅行会社のツアーが実際にあるようで、面白いな〜と思いました。 北斎も広重も、名所や有名なイベントを描いています。これにより、江戸に旅行ブームが起きたのも納得で、私も見終えた頃にはすっかり旅気分でした。 館内へのアプローチも豪華でした 二大風景版画一挙公開 北斎と広重 冨嶽三十六景と東海道五十三次 2018.03.16|金| - 2018.04.24|火| MOA美術館  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

五木田智央 PEEKABOO ーオペラシティアートギャラリー

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ずっと観たい、と思っていた、五木田智央の作品をある程度の数をついにまとめて観ることができました!確か数年前にもDIC川村記念や、 タカイシイ で展示があったと思うのですが、チェックしつつも、残念ながら見逃していたので、今回は行けて良かったです。 特定の著名人を彷彿とさせる人物が描かれていたり、時に顔が消されていたり、体のパーツが部分的に単純化されていたりと、 全てモノクロの絵画 ということも相まって、ジワリとくる怖さを醸し出すことに成功していると思いました。現代社会の倦怠感も感じられ、そういう意味では、 ホックニー のような面も少しあると思いました。 sacrifice/2018 モノクロの絵画のみを描く作家って他にいないですよね。 その辺も多分計算されていて、すごくいいなと思いました。同行の友人は、「オシャレすぎてダメ」と言ってましたが、私は好きです。なぜアメリカの文化を描くのか、と聞かれたら好きなんだろうね、としか答えられないように思うのですが、自分の属する日本のことを描かねばならないというルールがあるわけではなく、芸術は自由であるべきと私は思うので、「好きなものを描く」のはアリだし、ここまでのレベルで描けていれば、力強い説得力がある、と私は思いました。 皆さんも是非、足を運んで、五木田ワールドに浸ってみてください。 会場は全て写真撮影OKでした。(もちろんフラッシュはダメですよ〜) 五木田智央 PEEKABOO/Tomoo Gokita : PEEKABOO 2018年4月14日[土]─ 6月24日[日] 東京オペラシティ アートギャラリー[3Fギャラリー1, 2] 11:00 ─ 19:00 (金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで) 休館日:月曜日 (ただし4月30日は開館)  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

名作誕生-つながる日本美術 - 東博

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世界で一番古い美術雑誌 が日本で刊行されていることを皆さんはご存知でしょうか。その名は 『 國華 』 、 1889年(明治22年) に 岡倉天心 により創刊された雑誌で、現在も刊行を続ける東洋美術の雑誌です。最新号のお値段は、7560円也!多分高級な印刷技術で作られているのだと思いますが、つるりとした質感の紙で、これが値段に見合ったものなのか、正直に申しますと、素人目にはわかりませんでした。気楽にお試し購入して、確認できる金額ではないですしね。いつかチャンスがあればじっくり拝読したいところです。 さて、この雑誌に今まで掲載されたことのある作品をもとにし、日本の美術が中国美術や様々な過去の作品からどのような影響を受けて日本美術が展開してきたのか、その変遷を、具体的に作品を並べて展示することで、いわば 「証明」 したり、または例えば 若冲の「鶏」 が自作の中でどのように描写変化していったか、いわば自己模倣の展開を、作品を実際に並べて 「比較」 したり、 菱川師宣の「見返り美人」 のあのポーズが、過去の他の日本画の中にも見受けられるものであることを、展示で「比較」したり等々。。わかりやすい例を挙げましたが、他にも 普賢菩薩像 の表現のされ方を、彫刻、絵画、書物から紐解いてみたりと、知らないこともたくさんあって、新鮮な驚きが見て楽しい展示となっていました。 第1章「祈りをつなぐ」ー主に仏像など 第2章「巨匠のつながり」ー雪舟と中国、若冲など 第3章「古典文学につながる」ー源氏物語、伊勢物語 第4章「つながるモチーフ/イメージ」山水、花鳥、人物、古今 この展覧会は、1人の作家、1つの流派や時代性を追う従来型の展覧会ではなく、テーマによって選ばれた作品が紹介されている点が新鮮でした。 観普賢経 さて、そんな展覧会のハイライトはおそらく、 雪舟等楊 のコーナーでしょうか。中国絵画から取り入れたものをどう発展させたのか。実際に、 呂紀、玉澗 の作品を並べて検討しています。また、 後期(2018年5月8日〜27日) には、所在がわからなくなっていた 雪舟の「倣夏珪山水図」 が84年ぶりに発見され、東京で初めて公開されるのだそうです。 しかし、作家にとっては、結構苦痛な展示であるかもしれません。模倣した原本と並べられるのですから、と考える