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終わりの向こうへ:廃墟の美術史

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会期終わりまぎわのレポで失礼致します。 昨年末より開催されていた 廃墟 をテーマとした 渋谷区松濤美術館 での展覧会へ行ってまいりました。 廃墟といえば、私が知っていたのは、19世紀のイギリスは ヴィクトリア朝 で廃墟を愛好する人たちが集い、廃墟見学ツアーなどが催されていたことがあるというお話と、現代では廃墟の写真集などが世界各地で作られたり、日本だけではないかもしれませんが、「廃線」とという鉄道ファンのカテゴリーもあるほどで、廃れたものへのノスタルジックな感情は洋の東西を問わず、1つの美の範疇として定着している感があるということくらいでした。 とまあ前置きはそのくらいにし、この展覧会は廃墟の美術史とあるように、廃墟の事始めからスタートし現代の作家たちにそれがどう継承されているかを時系列に見ることができる小ぶりながらも歴史を見ることができる展覧会でした。 元祖廃墟作家 は、 シャルル・コルネリス・ド・ホーホ  (1600?-1638)であるとされているようです。17世紀オランダ絵画黄金期のハールレム出身の風景作家で、画面には、廃墟とともに人物もでてきます。この頃はまだ廃墟のみ、という描き方ではなく人間も描かれていたのが特徴かもしれません。 さて、次に紹介するのが、 ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ (1720-1778)です。個人的に大変興味がある作家です。建築家でもあったそうです。ローマの細密な景観を描いた版画が有名です。(写真下がローマの古代遺跡のエッチングです) その次は、フランスの ユベール・ロベール (1733-1808)です(一番最初の写真では下)彼はローマで学んだこともある、フラゴナールとも親交があった作家です。**フランス革命**のギロチンをなんとか逃れ、ルーブル美術館での美術品管理を手がけた人物としても有名だとか。優美な空想的風景画で知られています。国立西洋美術館等では2012年にロベールの展覧会「時間の庭」展がありました。 話がそれますが、私がよいなと思っている廃墟の写真集は、**NYのエリス島**で撮影された写真集です。買ってはいないのですが、あってもいいなと思っている本の1つです。 現代作家では、 デルヴォー、マグリット、池田龍雄(前期展示のみ)、大岩オスカール、野又譲、元田久治 が紹

ムンク展―共鳴する魂の叫び 都立美術館

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1月20日まで開催された ノルウェー を代表する作家 「 ムンク 」の展覧会 へ行ってまいりました。ムンクの美術館はオスロにあり、丘の上の見晴らしのよい美術館を建設中とのことでその期間にどうも日本に来てくれたようです。 さて、ムンクは見に行くの?と若い油画系の若者に聞いたところ 「行かないといけませんかね?」 とのこと。「叫び」の絵画が有名すぎて、中には辟易して行く気が起きないという人がある程度いたのかも、と思いました。ところが会場は超満員!!「 ポケモンと叫びのコラボ 」もあったりして、大盛況という感じ。。ちょっと入るのをためらって帰ろうかと思いましたが、なんとか入場できました。 で、 私、そういえば、ムンクをまとめて見たことあったな、 と徐々に思い出してきまして、帰宅後、何と無く集めている感じとなっている訪問した展覧会のポストカード集を見て見ました。 1992年の「ムンク 画家とモデルたち」 というムンクとモデルたちの関係に注目した展覧会でした。おぉぉぉ、、27年前ですわ見たのは、、買えなくて図録持ってないけどまあまあ内容を覚えてるから不思議です。 27年前に買ったポストカード 今回は、そういう「スキャンダラスな男性作家とモデルの関係」という雰囲気はあまりなく、しょっぱなから 元祖セルフィー 作家としてのムンクということで、晩年に至るまでの彼の 自画像 が展示されていて、おお!これは現代的アプローチ!いいね!と思ったのでした。 ムンクは肉親がどんどん病などでなくなる中で、自分も死ぬんじゃないかという思いに取り憑かれてしまい、それが作品にも大いに反映されているのですが、、結果、それが飯の種となり、さらに一人長生きしたという。。。なんと人生は皮肉なのでしょうか。 今回購入したポストカード 27年前に買ったポストカードと見比べてもらえば、なんとなく展覧会って、同じ作家を扱っていてもアプローチが違うと全く違う展覧会となるということがわかってもらえるかも?と思います。そしてそのアプローチには時代も反映されているという。。 ムンク展 特設サイト  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブ

2019年 初の美術館は国立西洋美術館「ルーベンス」展

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昨年から話題となっています大型展「 ルーベンス 」展へ、ようやく行ってまいりました。 国立西洋美術館 にて2019年1月20日まで開催中でした。またまた終了後のレポで失礼します。 さて、こちら、平日午後に行きましたが、かなりの混雑ぶりでした。(ショップが特に並びました) ペーテル・パウル・ ルーベンス(1577-1640) 、といえば、 ネロとパトラッシュ が最後に召された教会に設置されていたあの絵画がルーベンス、、というのは日本では有名なお話ですが、それはさておき、西洋美術の大家の1人。スペイン領ハプスブルクだったベルギーのアントウェルペンで 工房製作 をしていたことも有名で、大量の作品を仕上げ、絵画のサイズもかなりの大きさで、全てが重量級の偉大なマエストロの作品が日本でまとめて見れたのは、幸運でした。とりあえず、 皆ほぼはだか でございます。女性のヌードではなく、男性のヌードに注目した第4章のコーナーもなかなかすごかったです。古代彫刻を研究したことが、古代の彫刻の展示とともにあり、説得力がありました。また、作品のテーマはキリスト教的な主題や神話的主題のオンパレードでもあります。その肉感的な人体描写や宗教画の世界が苦手な方もおられるかもしれませんが、その質感のすごさに圧倒されます。 ルーベンスは、外交官としても活躍し、ハプスブルグの宮廷作家であり、工房経営もし、と常人では考えられないほどの活躍をした生前から評価された作家だったということですね(現代まで絶えず評価されていたかどうかは調査不足で不明です)。イタリア絵画を研究し、バロック絵画の父と言われる作家となりました。大作家ですね。 ショップではベルギービールとビアジョッキの販売もありました。いいなあと思いましたが、グッと我慢。 特設サイトはこちらです  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

2019年 最初の展覧会は池田龍雄展

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銀座の ギャラリー58 ( 山野楽器の裏手にあります ) にて開催中の「 池田龍雄展 1950-60年代 」へ行ってきました。1月7日~19日です。池田龍雄は、練馬で昨年展覧会があり、こちらを大変惜しくも見逃してしまい、規模は違いますが、実物を拝見したいと思って、銀座へ行ってまいりました。 池田龍雄とは? 戦後美術を牽引したうちの1人の画家。独特の奇想の世界を描いたペン画から始まり、楕円をテーマにした平面作品に結実したその画業は、御年90を超えた今も続く。戦後美術の目撃者であり実践者。 今回の展示は、「 ジャズの窓 」という大阪での音楽イベントに宇野亜喜良とともに映像として出品した作品の元絵となったペン画の連作だそうです。 池田龍雄「ジャズの窓」より 美しく繊維なタッチです。シュールで美しい世界です。 個人的に、おすすめです。  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ

2018年美術展覧会 マイベスト3

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仁和寺にて撮影 蘭陵王が描かれた木戸 新年明けましておめでとうございました。 2018年度は個人的には、なかなかの試練の年でした。そんな中でブログの更新もおろそかになり、冬には展覧会へ行く元気も失いつつありましたが、なんとか回復しかけてきたところ、という感じの今日この頃です。 2018年度は、 東京国立博物館の賛助会員 となり、大変素晴らしい体験ができました。もう少し、通えるとよかったのですが、、またいつか、賛助会員として美術の発展に協力できる日を楽しみに待ちたいと思います。 さて、恒例となりました(?)、その年のベスト展覧会をまとめて見ました。 2018年度 合計28展覧会 博物館に初詣 仁和寺と御室派のみほとけー天平の真言密教の名宝ー アラビアへの道 ブリューゲル展 石内都「肌理と写真」 熊谷守一 生きるよろこび展 浜田知明「100年のまなざし」 博物館でお花見を 名作誕生ー繋がる日本美術ー 五木田智央 PEEAKABOO 北斎と広重ー富嶽三十六景と東海道五十三次 ルドンー秘密の花園 浮世絵モダーン 光画と新興写真 写真発祥の原風景 長崎 モネ それからの100年 ターナー 風景の詩(うた) 写真都市展ーウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち 縄文展ー1万年の美の鼓動展 イントゥ ザ ピクチャーズ 珠玉の昆虫標本展 小瀬村真美:幻画〜像(イメージ)の表皮 内藤正敏 異界出現 マルセル・デュシャンと日本美術 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ 描かれた「わらい」と「こわい」展 ─ 春画・妖怪画の世界 太陽の塔ミュージアム アーミッシュ・キルトを訪ねて 月平均2展覧会、といったところでしょうか。2018年度は写真美術館に足を運ぶことができたように思います。2017年度に比べると、総数はかなり少ないですね。こういう年もあるということで。 さて、私的ベスト3です。 1. 仁和寺と御室派のみほとけー天平の真言密教の名宝ー 2.  ブリューゲル展 3. モネ それからの100年 でした。仁和寺は、暮れに実際にお礼参りではないですが、訪問することができ、素晴らしい環境に改めて感動しました。東寺にも行け、こちらも圧巻でした。密教美術の迫力は筆舌に尽くしがたいものがあ

ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪

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ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪 を見ました。レポが追いつかず、こんなに時間がたってしまいましたが、大変良かったです。戦後美術に興味がある方はぜひ。この映画を見た友人の中には、「ペギーはすごく残念な感じ」と語っていた人がいまして、やはりこのペギーという人物は 賛否両 論のすごい人物には違いないと思いました。個人的には、いいぞ!ペギー!やるじゃない!と思ったのですが、、、 さて、この「 ペギー・グッゲンハイム」(1898-1979) という米国女性は、あの「グッゲンハイム美術館」でお馴染みの、グッゲンハイム家という名門一家に生まれた女性です。グッゲンハイム美術館自体は、非常に仲が悪かったとされるソロモン・グッゲンハイムという叔父のコレクションを中心に設立されたものなのですが、ペギーはその叔父の美術館の分館という形でヴェネチアの自邸を美術館にした、戦後の優秀なアートコレクターの1人でした。 (以下ネタバレあり、ご注意ください) 映画は、どうやってヴェネチアに美術館が作られていったのかを、彼女の生い立ち、人生とともに紐解いていくもので、ベースにあるのは、ペギーが認めた伝記作家により書かれた「ペギー 現代美術に恋した気まぐれ令嬢」(文芸春秋社)がベースとなっているそうです。さて、この映画の見所は、戦後の現代美術作家たちが、どのように関係し、仲間であったのか、その人間関係が1つの見所であると思います。 ペギーは肉食女子ですw 今は著名な男性作家たちの多くと恋多き関係(というかお金に多少ものを言わせた肉体関係というか)にあり、それを批判する男性評論家ももちろん当時からいたそうなのですが、多分、力のある男性が当時していたことを単に女がしただけ、ということではないのでしょうか。その肉食ぶりに見ていて仰天しますが、私が一番彼女がすごいなと思ったのは、批判されてもヴェニスの自邸に皆を「快く」招き入れ(出されるワインはまずかったそうですけど、タダで供されるんですから、贅沢な話です)、批判をまるで聞いていないかのように振る舞えた、そのメンタルの強力さ、そして最後までアートをコレクションすることを諦めなかったその胆力でしょうか。。 劇作家の ベケット と付き合っていたことがあり、 マックス・エルンスト が2番目の夫で、 ジョン・ケージ、デュシャン、ポロッ