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東北画は可能か?ー原爆の図 丸木美術館

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「東北画は可能か?-千景万景-」 そのタイトルに惹かれ、埼玉の 原爆の図 丸木美術館 まで行って参りました。会期は2022年7月3日で終了していますが、東京都港区の カイカイキキギャラリー にて、 「 東北画は可能か?-生々世々- 」 と一部タイトルを変えて、2022年7月28日まで開催されています。必見の展覧会です。 まず、「東北画」という発案、これが村上隆も書いていますが「 九州派 」を想起させます。九州派は1950-60年代に活躍した桜井孝身、菊畑茂久馬らを中心とした前衛アートの一派です。グループ展を引っ提げ上京し存在感を見せつけた際のエネルギッシュなエピソードを読んだことがあります。一方、この「東北画」というのは、想像していよりもう少し落ち着いた雰囲気の展覧会だったのですが、主催者が東北芸術工科大の教授お二人、参加者は学生、ということでその辺も関係しているのかもしれません。 東北とは?絵画とは?共同制作とは?アートとは?辺境からの問いと挑戦 、と説明がありましたが、この展覧会の特徴は、昨今の流行でもある「アートコレクティブ」、複数人による共同制作的側面があることでもあると思います。 冒頭に、山形の民間風習である未婚で亡くなった方の架空の婚礼図を描いて奉納する「 ムサカリ絵馬 」が展示されていることでも明らかですが、絵画のテーマは、東北の風土、文化を主なモチーフとして描いており、迫力ある大きな作品群にハッとしました。そこで私は、 青山夢 さんの作品をふと思い出しました。ムサカリ絵馬をアートとして描いている若い作家で、確か彼女も東北芸術工科大出身だったなと。彼女は授業で東北のフィールドワークを行なったことでかなり触発を受けたと確か語っていたので、なるほど東北芸工大はかなり民俗学にも力を入れているのだなとわかりました。今や美術系大学では人類学や民俗学的の学習からグループワークを行うのがスタンダードになってきているようで、時代の変化を感じました。精神的なアプローチを美大の授業で学べるのは大変素晴らしいことだと思います。 今後の展開が気になるグループ展だと思いました。 今回は、動画を撮影してみました。カイカイキキでの展示も見に行きたいと思います。  ■-□-■-□-■-□-■- 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 に

2022年5月に見たもの

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 1.Going Down The Rabbit Hole /髙田安規子 + 髙田政子@ MA2 Gallery  2022.0521-6.25 双子姉妹によるアートユニットの「不思議の国のアリス」と「スケール」をテーマにした展覧会。一見少女趣味に陥りがちなテーマをうまく操ってまとめていたと思う。ギャラリーがうさぎの穴に落ちていくのとは逆に地上から上階に上がっていくというのが面白い。 2.Marriage / Oketa Collection 2022.04.28-7.3 建築模型展ー文化と思考の変遷ー/2022-04-28—2022-10-16 上記2展示とも、 what museum 寺田倉庫 にて。 作品管理で有名な寺田倉庫による展示施設での展覧会。Marriageはファッションで財を成した桶田夫妻の寺田倉庫に預けられた作品を展示するという趣向で、骨董もあるが主に現代美術の作品中心でした。目を惹く作品が多く楽しめる内容となっており、展示タイトルは「マリアージュ」ではなくもう少し違う視点でまとめた方が散漫な印象を与えなかったのではないかとも。 建築模型展は、戦国時代に実際に使われていた木製の城および周囲の模型が印象に残った。実際に城攻めにあった場合などのシミュレーションが行われていたようです。 寺田倉庫は近くに倉庫カフェがあり、そこでは若手作家の作品の展示販売が行われており、技法の紹介などをパネルにするなどして一工夫されていた。寺田倉庫は設営や作品運送も始めており、今後の動向が気になる企業の1つ。 3.光岡幸一「poetry taping」@ NADiff Window Gallery vol.79  キャノンの主催する今は亡き、写真新世紀に入選した作家による展示とのことで見始めたのですが、写真というよりは、インスタレーションなど、多様な展開を見せる若手の作家による展示でした。文字を描きそれらを写真に撮ることで作品化するという作家は今までにもいましたが、どうもこの作家はそれだけが目的ではなく、街を歩いた上でその場所で文字を描き、写真に撮るというプロセスを重視しているようです。しかも展示されているのは、扉の装置。それを鑑賞者が開けていいとのこと。建築->油画へ転身、そして写真新世紀?カオスの香りがぷんぷんしますが(笑)そのカオスの中から立ち上がる作家性が垣間

Chim↑Pom展:ハッピースプリング/MAMスクリーン015: ルー・ヤン(陸揚)

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 森美術館で2022年5月29日まで開催中の「 Chim↑Pom展:ハッピースプリング 」、金曜の夜間開館で行ってまいりました。Chim↑Pomの破壊力は相変わらず。展示もこなれておりベテラン域のアートコレクティブの気概を感じました。 上の写真は歌舞伎町で捕獲した「ネズミ」を剥製にしたものを、都市のミニチュアと共に展示した「スーパーラット」という作品。展示は今までの回顧展的な要素を含みつつ、新しい見せ方を試みている点がさすがでした。私が最後に見た大きなChim↑Pom展は実は2012年のパルコでの展示で、もうかれこれ10年も前でした。  また、森美の企画展示「 MAMスクリーン015: ルー・ヤン(陸揚) 」も併せて見ることができたのですが、こちらを個人的に見るべき映像作品として大々的に推します。全プログラムを見終わるのに60分はかかりますが、ネットにも出ておりませんし、今現在、森美でしか見れないと思います。インタビューだけを読んだ時は、日本のアニメからの影響が強すぎるのではないかと思っていましたがアニメからの引用や影響は副次的であり、本質的には哲学的な作品で、人生とは?生きる意味とは?という直球のビッグテーマに挑んだ作品であったと思います。迫力のある破壊力ある映像作品で今後が楽しみな作家です。 さて、2020年5月、ようやくコロナ禍の規制も緩和され、美術館に行きやすい状況に整って参りましたが、今月は、できれば東京都美術館と現代美術館でみたい展覧会がありますので、なるべく時間を作って行きたいと思います。  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ  ■-□-■-□-■-□-■-□ 前の投稿へ

東博「琉球展」〜神猫、ノロなど

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 ご無沙汰しています。最後の投稿が、コロナ前でしたので、2年半ほど休筆していたことになります。巷ではNOTEが主流でブログという形式がオールドメディアになりつつあり、継続を迷いましたが、自分の記録のためにも、再開することにしました。 最初のカムバック投稿は、東博の「琉球展」です。開館150周年の節目、今年が沖縄復帰50周年というダブル節目の展示だったと思います。 さて、「琉球展」ですが、色々と不勉強で知らないことがありました。 以下、私が知ったことを感想を交えて書いていきたいと思います。まずは、琉球王国を統治した王家の名前は「尚(しょう)家」というそうです。家紋は「 左巴紋 」(ひじゃいぐもん)。左巴紋の家紋は他にも土方歳三も用いていたとか。目を惹く家紋です。 第二 尚家の家紋: 左巴紋 琉球王国は、距離的にも中国との結びつきが強く、 冊封使 という中国からの使者が 1663年 に沖縄に来ており、結果、中国の臣下という扱いになる代償として、さまざまな庇護を受けていたようです。その冊封使を迎え入れる様子を描いた「 琉球来聘使登営図 」に描かれている中国側が掲げる「旗」の虎の絵が気になりました。 琉球来聘使登営図-東京国立博物館所蔵 画像が小さいのですが、直立した虎がコミカルに描かれています。こういう図像はあまり見たことがないように思います。今回の展示は、猫や虎が少しですが描かれている作品が展示されており、そのどれもがユニークな表現のように思いました。 虎図ー第2尚氏時代、19世紀 上の図も展示されていました。東博収蔵の作品です。前脚をクロスし、尾を立てているのが、長崎や朝鮮の虎図と共通した特徴だそうです。デフォルメされた目や口が琉球的な描画だと解説にありました。 琉球来聘使のはたに描かれている虎もそうですが、コミカルで大変愛らしいと思いました。(シーサーの目に似ているようにも思いました) また、下の「神猫図」も展示されていました。山口宗季(唐名:呉師虔 1672~1743年)という福建に留学した琉球王国の絵師の作です。 神猫図 1725年ー那覇市歴史博物館蔵 こちらの猫の目も、コミカルな感じがして目を惹きました。この作品と似た「神猫図」は他に2作ほど確認されているようです。十二支から外れている猫はあまり日本画の画題としてはポピュラーではなかったように思いますが、なぜ神