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奇想の系譜展へ〜奇想ブームについて考える

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奇想の系譜展-江戸絵画ミラクルワールド 公式サイト 2019.2.9-4.7 東京都美術館 月曜休室 *3月20日(水)はシルバーデイのため混雑が予想されるとのことです。 「 奇想の系譜 」とは、 美術史家 辻惟雄(つじ のぶお) が1970年に発表した書籍のタイトルです。私も1冊持っており、とても楽しく読んだ記憶があります。 岩佐又兵衛、狩野山雪、 白隠慧鶴(はくいん えかく)、 伊藤若冲、曾我蕭白、長沢芦雪、鈴木基一、 歌川国芳 8名 の作家が紹介されています。この順番は、生まれたのが早い人順ですが、実は又兵衛〜国芳まで約200年ほど生年に開きがあります。(基一と国芳は1歳違いですが)しかも、奇想の系譜の本には、白隠と基一は載っていないので、 あれ? と思う方もいるかもしれません。このたび、新版の奇想の系譜が出るとのことで、未確認ですが、その中では、紹介されているのかもしれませんね。個人的には奇想に 河鍋暁斎 も加えていいと思うのですが、どうでしょうか? 今や行列ともなる人気の若冲、国芳ですが、「 奇想の系譜」 の発表当時〜2000年頃は、並ぶほどの人気はなかったのではないでしょうか。2000年代初頭も、ここまで人が入ってなかったと記憶しています。ちなみに、私が子供の頃の美術の教科書を確認してみましたが、若冲は載っておらず、国芳が載っていました。しかも、「歌川国芳」ではなく「 一勇斎国芳 」という記載でした。 曾我蕭白「唐獅子図」 何故、今ここまで、奇想の系譜の作家たち、特に若冲や国芳が愛されているのか。若冲が存命当時は、 円山応挙 と人気を二分していたけれども、その応挙は今はそこまで人気がなく、弟子の長沢芦雪の方が人気がある。と、人気は時代により移り変わっていくものであることがわかりますが、何故、今、奇想が人気なのか。色々な方々がその辺は研究されていると思いますが、私なりに考えてみますと、例えば、若冲の異常に細かく、個性的すぎる鶏の描写が、デジタル世代の手仕事への礼賛に訴えるところがあるのではないか、と思ったり、又兵衛や蕭白のグロテスクな表現や、国芳の劇画的な表現やその笑いの精神が大変現代的であるからではないかと思ったりしました。蘆雪や白隠のおおらかな描き方は、ゆったりした、リラックス感溢れるもので、chillな感じ(笑)

太郎は戦場へ行ったー弓指寛治展@岡本太郎記念館

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青山にある、 岡本太郎記念館 へ久々に行ってきました。記念館では、 2月24日 まで、「 瞬間瞬間に生きるー岡本太郎とジャズー 」を開催中なのですが、その一角で、昨年岡本太郎現代美術賞の敏子賞を受賞した 弓指寛治(ゆみさしかんじ) の展示「 太郎は戦争へ行った 」展が行われておりました。 岡本太郎 が 1942年 から四年半もの間、戦争に従軍したことを題材にし、彼自身の平面世界を展開させた新作のようです。 弓指寛治 は ゲンロン 系の作家で、私は岡本敏子賞を受賞された展示を拝見しておりますが、彼はその時、形代(かたしろ)のような鳥のようにも見えるオブジェクトを画面に本当に大量に描き詰めておりました。今回は、死体にわいた蛆のようなものを画面に描きまくっており、死の世界を彷彿とさせる彼の作品世界は健在でした。 弓指さんの新作 そさらに、今回は「戦争」がテーマの1つ、ということもあってか、 ドクロ をモチーフとして描いておられましたが、これも太郎さんがメキシコに惹かれ、訪問し、インスパイアされていたこととも符合して、なかなか良いコラボ的な味わいが出ていたと思います。あとは、一部シェイプドキャンバスにしていたのも面白かったですが、もっとはみ出していてもよかったのかなと思ったりもしました。今後が楽しみな作家の1人かと思います。よければ青山へ散歩がてら行ってみてください。 岡本太郎のジャズレコードコレクション 太郎のアトリエ 太陽の塔がお出迎え〜 相変わらず楽しい場所でした! 写真撮影オッケーです。比較的小ぶりの展示会場ですので、青山散策の傍、是非どうぞ。 *開館時間*10:00~18:00(最終入館17:30) *休館日* 火曜日 (祝日の場合は開館) *但し2019年2月25日(月)は臨時休館* こちらに 特別割引券 あり(印刷して持って行くタイプのものです)  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ  ■-□-■-□-■-□-■-□ 前の投稿へ

顔真卿 王羲之を超えた名筆展へ

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書道 「だけ」の展覧会へ行くのは、多分生まれて初めてだったように思います! 思ったより、よかった!というのが素直な感想です。 書道の知識が浅いこともあり、音声ガイダンスのサービスを聴きながらまわってみました。 まずは、顔真卿による 楷書 をご覧ください〜。(千福寺多宝塔碑、752年)大変、力強く、明瞭で「これが楷書だぜ!!」という雰囲気にあふれる字ではないでしょうか?素人目ですが、美しく強い筆跡に打たれました。 顔真卿(がんしんけい、709–785) は中国の盛唐時代の書家であり政治家でした。高校時代に世界史で習った記憶があります。当時の山川出版から出ている世界史用語集を確認したところ、きちんとアンダーライン(きたなくて失礼〜)がひかれておりましたw ちなみに、この用語集の名前のあとにのっている「14」という数字は、どれだけの教科書に出ているか?という意味でマックスは確か15。顔真卿はかなり重要な人物とされています。 山川の世界史用語集より ガンさん ってすごい名前です。名前のインパクトがすごくて覚えていたのかも。でも本当は「 YAN 」さんと読むんですね!知らなかった〜。ガンとヤンではかなり印象が違ってきてしまいますが。。 顔真卿はルールを固守する融通のきかない人であり、それが原因で地方に11年間も左遷されたり、中央に戻りまた出世したり、また 安史の乱 を予測し、顔一族をひきいて立てこもりの攻防戦を繰り広げたりと、政治と密接にむすびついた人物でもありました。今回の展示では、中国の歴史の中では、「 政治と書 」がいかに深く結びついてきたかということもよくわかりました。 上の写真は、日本初公開、故宮博物院より来日した、 顔真卿、758年の「祭姪文稿」(さいてつんぶんこう) です。(*こちらは閲覧に30分ほど並びました!展示に行く予定の方はご注意ください) 最初は丁寧に書いていますが、そのうち筆致が荒く、感情が入り込んでいくかのように書きなぐるように変化していきます。 これは、 安禄山の反乱 により、顔一族の連絡役をつとめた 姪の顔季明(がんきめい) が反乱軍により殺害された、その死を悼むための文章だそうです。 顔真卿の熱い性格が伝わる書だと思います。 この展示では、顔真卿だけではなく、 篆書、隷書、楷

民藝 Another Kind Of Art展 〜21_21 DESIGN SIGHT

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日本民藝館に3年ぶりに行ったから、という訳ではないのですが、深沢直人さん監修の民藝の展覧会へ六本木の21_21 DESIGN SIGHTへ行ってきました。展示は主に、 日本民藝館 の収蔵品からセレクトされたのだそうです。 おもしろかったです! 展示にキャプションはないのですが、展示一覧の用紙があるので、何かは参照できます。「直観」でみるだけに留めておくこともできましたが、私は見終えたあとに、何かをざっと一覧で確認しました。 another kind of art とは、染色工芸家の 柚木沙弥郎 (ゆのきさみろう)が言った言葉に端を発するそうです。 以下展覧会サイトよりーー 96歳の現在でも意欲的に活動を続ける柚木沙弥郎から「僕が求めるのは、染色家という肩書きや民藝というカテゴリーじゃない。『Another Kind of Art』なんだ」という言葉を聞いたとき、私は思わずハッとした。柳が提唱した「民藝」も、実はそのものづくりに携わる人々の生き方を示しているのではないだろうか。 実直な創作者たちは、とかくカテゴライズされることを嫌う。型にはめられそうになると、思わずそこからはみ出したくなってしまう。形式や様式にしばられない飄々とした態度。一定の仕上がりを求めない自由さが民藝にはある。 ーーーーー カテゴリー化は、作品を1つの枠から見ることになるので、それは批評する側、鑑賞者からは便利な面もあると思います。ですが、それは枠に当てはめて作品を考えることにもなり、自由に捉えることを妨げることにもなるのではないでしょうか。もっと、創造は自由でいい、そう思います。 とはいえ、「民藝」というのも1つのカテゴリーであるには違いないのですが。。なかなか深い展覧会のタイトルだと思います。 さて、展示そのものですが、コンパクトにまとまっていて、作家の普段を取材した映像も個人的には楽しめました。 たっつけ(袴の一種) 日本のものでは、卵の殻を重箱にはりつけた民芸品(螺鈿細工かと思いました)や、刺繍?をほどこしたかのような、ちょっとしたサルエルパンツのような衣装(たっつけ、袴の一種)や、瀬戸焼の大胆な動物デザインの蚊遣り入れなどなど、くすっとできる愛らしいものからかっこいいものがたくさんあり、楽しい展示でした。 深沢さんが、作り

柳宗悦の「直観」美を見出す力へ〜日本民藝館

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東京の駒場にある、 日本民藝館 へ久々に行ってきました。前回行ったのは、2016年の1月でしたので、3年ぶりということになります。日本民藝館の佇まいの美しさには、そこに入るだけでじわじわと打たれてしまうものがあり、再訪してしまいたくなる何かがあるように思います。 さて、本題の展示ですが、今回は、収蔵品の中から「直観」するにふさわしい品々が展示されており、キャプションは一切ありません。展示品目一覧の紙も配られず、見終えた最後に 柳 宗悦(1889-1961) の「 直観について 」の文章が記載された用紙が持ち帰り用に置いてあるだけの演出的ともいえる展覧会となっていました。併設展との区分が若干わかりにくかったのですが、まあそれもよく見たらわかるかなと思いました。 上の着物もキャプションはありませんでしたが、同じ網目柄の手ぬぐいを持っていて、なんとなく日本のものかなと思いましたが、ハンバーガーのような模様は何かわかりませんでした。正解は多分この展覧会趣旨によればなくてよく、自由に想像してかまわないということなのでしょう。 ------------ 直観に在るとは、「うぶのまま」で受け取り「うぶのまま」で見る事である。 美しさの理解に、直観がかくも必要となるのか。それは美しさが言葉や判断に余るものだからである。(中略)その理解には言葉を超えた理解、即ち知的判断に限られない洞察が、内に働かねばならない。 (直観についてより) ------------ 柳の言う直観は「子供のような心」で見ることのようにも思えます。どうしても人は作品がどこでつくられたのか、技法は何か、時代は、といったことを頭の片隅で考えてしまいますが、作品をそのような知識なく、純粋に子供のような心で見ることを思い出せてくれる展覧会でした。 柳宗悦の「直観」美を見いだす力 2019年1月11日(金)~3月24日(日)  ■-□-■-□-■-□-■-□ 下記ランキングに参加しています。 よかったらクリックしてやって下さい〜。 にほんブログ村 美術館・アートミュージアム 人気ブログランキング 美術鑑賞・評論 ブログランキングへ