岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟 展へ

東京都庭園美術館にて開催中の「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」へ行ってきました。


この写真を見せたら、友人が「若い作家か?」と聞くのでいや、岡上淑子(おかのうえ としこ)さんは、御歳90にはなるという作家だ、と言いますと、驚いておりました。

たしかに、これが50年代に作られたとは思わないかもしれません。フォトコラージュによってつくられた作品群は1950年から56年までの7年間につくられたものだそうです。洋裁を学んでいた岡上淑子は、学校の課題を作るために、当時はまだ珍しい海外のファッション雑誌をきりぬいて、それらを組み合わせ、糊で貼ったコラージュを作ったところ、瀧口修造の目にとまり、彗星の如くデビュー、当時のアートの中心的場所の1つであった新宿のタケミヤ画廊でも展示をします。そして、画家の夫との結婚を機に、次第に作家業からは遠のき、しばし忘れられていたのですが、写真美術館の学芸員であった、金子隆一氏に「再発見」され、2000年に第一生命ギャラリーにて個展が開催され、そして、アメリカのヒューストン美術館にもたくさんの作品が収蔵され、アメリカで作品集を出版、そして、今年、庭園美術館で個展を開催、というおおざっぱですが、だいたいこういう経由のようです。

この庭園美術館での個展は、個人的には大正解だと思いました。


一応、フォトコラージュの作家は「写真作家」ととらえることができると思いますが(本当はそんな区分はどうでもいいとは思います。そのカテゴライズを作家が必要としてるとは思えないです)写真作家だからということで、写真美術館で開催されたら、ここまですばらしい展示にはならなかったと思います。写真美術館は、残念ながら、予算のせいもあるのか、展示する空間としては今1つかなと思うことが多いです。庭園美術館は建物も美しく岡上の作品世界と大変マッチしていました。また、写真とともに、50年代の服飾を紹介するエリアもあったのも大変よかったです。個人的な話ですが、写真だけの展示は、正直、観ていると飽きることがあるのです。最近では、写真作品でも、壁の色を変えたり、インスタレーションにしたり、映像を交えたりと工夫されてきているのが嬉しいですね。

展示の途中で、当時の美術系雑誌の批評のページがガラスケースの中に表示されている場所がありました。岡上の作品が「日本の写真を使っていたらこうはならず、もっと違うものになっているだろう。身近な日本の写真を使わないのは現実に向き合っていないように感じるがどうだろう。」といったような意味合いで批評されていました。これを読んで私は大変驚きました。服飾を学んでいた岡上にとってVOGUEなどのファッション雑誌は、夢の世界ではあったかもしれませんが、身近な存在ではあったはずです。そして、こういう意味合いで批評してくる人って今も昔もいるんだと知って驚愕しました。身近な日本をテーマにしていないとすぐ現実を見てないとか、オシャレ系〜とか薄笑いする人が結構いるわけです。土着的、民族的だったら合格!みたいな。アホかと思います。本当に。作家の制作背景を理解しようともしない表面的な感想としか言いようがない。

と、熱くなってしまいましたw

庭園美術館の新館の方でも岡上の作品が展示がされていました。新館は写真の額装を壁面展示していくという感じでしたが、なんか変だなと、途中で違和感を感じました。それは、額の色がまちまちなのです。。木目、黒、白、、と言った具合で、統一感がない。収蔵を見ると、どうやら、額の色の違いは収蔵先の違いみたいです。。なんとなくヒューストンの美術館にある作品の額が高級感あり。。いいことです。だが、日本ももっとお金かけろ〜、、とも思います。。

岡上淑子 画像検索より

新館の方では、戦争の最中に生きた岡上の体験を重ねるかのような、社会性を帯びたメッセージ性のあるコラージュが展開されておりました。日本の写真を使っていなくても、十分に作家の個性が活かされた、時事性の高い作品でした。




ところで、野中ユリ、という美術家がいます。岡上より、少し年下ですが、瀧口修造に師事した作家で、同じくフォトコラージュにも取り組んでいます。結構似た雰囲気ありますけど、かなり雰囲気は違いますね。もし岡上作品が好きなら、野中ユリも好きなのではないかと思います。今はなき鎌倉の美術館の別館で展示したこともありましたね。

岡上淑子展、2019年4月7日までです。



オススメの展覧会です。
展示替えもありますので、ご注意ください。

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