西洋更紗トワル・ド・ジュイ展へ

「工場の仕事」ーユエによる下絵
渋谷のBunkamuraにて開催中の「西洋更紗トワル・ド・ジュイ展」へ行ってきました。
今年楽しみにしていた展覧会のうちの1つでした。トワル・ド・ジュイといえば、アルカディアなイメージやロココ風な光景が描かれた、単色コットンプリントという解釈をしておりましたが、どうもそれは間違いとまではいかないまでも、正確ではなかったようです。トワル・ド・ジュイというのは、ジュイの布という意味で、仏の都市ジュイ市で生産された、主にドイツ人プリント技師、オーベルカンプ(1738-1815)が立てた工場で生産されていたコットンプリントの事を指し、私が思っていた単色プリントの布だけではなく、色とりどりの布が生産されており、むしろ生産の主流はそちらだったようなのです。

創業者のクリストフ=フィリップ・オーベルカンプ(1738-1815)の時代はナポレオンの時代、フランス革命の時代と重なる時代です。フランドル地方の特産品であるウール、そしてシルクが主流のこの時代、インドとの貿易の結果もたらされた更紗(=文様がプリントされたコットン)が<安価であり、簡単に洗濯できる>と、大人気となるのですが、伝統的な毛織物業者の抵抗にあい、暫く禁止令が出ていたほどだったそうです。そんな中、オーベルカンプは禁止令が解かれてから、20歳で召喚されフランスに工場を開いたという成功者でした。ナポレオンが工場を訪問するユエの絵画も展示されていました。

ユエ画「ジュイ=アン=ジョザスのオーベルカンプの工場」
(右下のとんがった帽子の人物がナポレオン)

成功の秘密は、オーベルカンプ自身もデザインはしていたようですが、アカデミーより動物画家の称号を与えられていたジャン=バティスト・ユエを専任デザイナーにしたことも大きかったようです。彼の描く田園風景の銅板プリントが人気を博したそうです。私が当初トワル・ド・ジュイの定義だと思っていたのは、この時代の単色銅板プリントに単を発すものだったのですね。そしてこの田園風景は、古くは1600年頃のルーベンスやテニールス親子、シャルル・ブラン、ブーシェに下絵提供を受けたこともあった、タペストリーにモチーフなどの原泉が見受けられるそうで、会場では、鹿狩り図や、花のモチーフのタペストリーも数点展示されていました。

さて、生産の中心は、インド更紗に影響を受けた、木版のカラフルなコットンプリントでした。マリーアントワーネットも愛用していたという、オーベルカンプの更紗は、上品な感じの模様が多く、後年、英国のウイリアム・モリスにも影響を与えたと言われています。

今回の展示で、長年の勘違いが訂正されてよかったです。そして銅板単色コットンのトワル・ド・ジュイ、私はとても好きでベッドカバーもトワル・ド・ジュイ風のものを使っているくらいなのですが、当初のトワル・ド・ジュイの絵柄は結構濃い内容と言いますか、アメリカの歴史というテーマのものがあったり、単に田園生活風のものばかりではなかったのだな、、、ということもわかりました。

金、土曜は21時まで開館しています。ぜひテキスタイルに興味のある方はいらしてください。金曜夕方に参りましたが、場内はそこまで混雑しておりませんでした。


西洋更紗トワル・ド・ジュイ展 公式サイト
2016.6.14-7.31 Bunkamura ザ・ミュージアムにて
会期中無休、19時まで(入館は18時半まで)、毎週金土曜は21時まで(入館は20時半まで)
オンラインチケット



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