フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展

フェルメール「水差しを持つ女」、レンブラント「ベローナ」は日本初公開(共にメトロポリタン美術館)合計60点のオランダ絵画の展示です。

森アーツセンターギャラリー
2016年1月14日(木)~3月31日(木)
 ※休館日:1月19日(火)
開館時間: 10:00~20:00

森アーツは、(2月中の火曜日は17時迄だったようですが)ほぼ毎日、20時まで開館なんですね。金曜の夕方に開館時間を伸ばす美術館が多い中、貴重と言えますね。私は、だいたい2つ以上の展示を1日に梯子するので、開館時間が長いというのはとてもありがたいです。できれば1日1展示として、ゆっくり余韻をも味わいたいところですが、なかなか難しいのが現状です。この日も、泉屋博古館と、サントリーなど、六本木界隈を梯子しました。これに加え新美術館も、歩いて回れるコースですね。

さて、本題のオランダ絵画展ですが、17世紀と言えば、ヨーロッパでは、ルネサンスが終わり、英では清教徒革命、仏では絶対王政が確立され、米では奴隷貿易がさかんとなり、魔女狩りがヨーロッパで大流行、ニュートンやガリレオによって、天動説が否定されていき、遠く離れた日本では江戸時代、そんな時代の中、オランダでは、自由貿易が盛んとなり、富を蓄えた市民階級が台頭し、絵画の需要は、貴族から上級市民へとその舵を切り始める。その結果、オランダ絵画は黄金期を迎え、フェルメールやレンブラント、ライスダールといった、ルネサンス期とは明らかに違ったタイプの作家が輩出されていく。

17世紀がオランダ絵画にとって、最盛期だったという事を(おそらく最初に)記述したのが、画家と批評家であったアルノルト・ハウブラーケン(ホウブラーケン)。正確には、『1560ー1660年が最盛期』と著書「大劇場」に書いたそうです。

全体的に思ったのは、改めて17世紀オランダ絵画、全体的なトーンが暗い色調だなぁ、という事です。当時は室内も暗かったはずです。そんな中で、おそらく室内に上級市民階級が飾った筈の絵画も暗い色調。壁の色は豪華な暖色系でもなかっただろうに、何故、こういった落ち着いた色調の絵画が好まれたのか?その答えは、多分、清教徒的な清貧さに由来するのかもしれません。とはいえ、風景画も、身近な主題から、ライスダールが劇的、理想的な風景画を描き出していったように、静物画でも、「豪華な静物画」と言われるジャンルが発生したり、次第に変化が生まれて行ったようです。(とはいえ、ロココのような派手さがないのは、時代精神でしょうか。)

因に、「豪華な静物画」というジャンルは、オランダ語で『pronkstillevens』といい、英語では ostentatious still lifes、1640年代にアントワープで始まったとされる、写実静物画の極みとも言える、高価な品物を配置した静物画の事です。ヴァニタス絵画の一形式と解釈されています。

17世紀オランダ絵画の全体的な雰囲気をつかむのには、最適な展覧会です。
会期は3月31日までと残りわずかですが、オランダ絵画好きな方は、是非お出かけ下さい。