ジョルジョ・モランディ 終わりなき変奏

2016.2.20-4.10
東京ステーションギャラリー
月曜休館
10:00 - 18:00 ※金曜日は20:00まで開館

ついにモランディ展へ行く事ができました。今年是非観たい展覧会のうちの1つでした。
終生、ほぼイタリアから出ず(スイスにはセザンヌ展を見に行ったそうですが)、素描の教師を経て、版画の教師となり、母と妹と暮らして、似たような静物画を描き続け、74で亡くなる。ジョルジョ・モランディ(1890~1964)、iいや〜変人ですよね。

同じようなオブジェを、生涯を通じて飽きずに描き続ける。
なんとなく、レーモン・クノーの「文体練習」という99ものヴァリエーションで1つの話を表現した小説を思い出しました。

思索好きだと自らを評するモランディは、瓶など、毎回ほぼ同じオブジェを少しだけ配置を変えて、描き続けた訳ですが、実は、瓶や缶など、卓上のオブジェだけではなく、花や風景も描いていた事は知りませんでした。花(造花らしいですが)の作品は、販売せず、親しい人にだけ贈られたそうです。風景画は、窓から見た、何の変哲もない田舎の風景を描いていて、それらはほぼ抽象画で、ある意味とても現代的な絵画に見えました。

オブジェの瓶は、自分で着色したり、埃を絶対にはらわなかったりと、かなり徹底して管理していたようです。家の中は、塵一つなく奇麗にされていたのに、モランディのエリアだけは、もわ〜っと埃がたちこめ、掃除厳禁だったそうですね。ある意味、静物画の修道士のような生活、と思いきや、(展覧会では触れらてはいなかったのですが)モランディは、愛弟子のようにかわいがっていた評論家のフランチェスコ・アルカンジェリが、モランディの評伝を書き、いざ出版の際に、その内容に異をとなえ、出版差し止めの事件を起こし、結果、アルカンジェリは失意のままに自ら命を絶ってしまった、という激しいエピソードもあったようです。(ジョルジョ・モランディ-人と芸術 ー平凡社新書)

展示を見た印象だと、50代の作品は暗いアースカラー中心であるのに対し、60代は、ミュートカラーのような色使いが多い気がします。アトリエのオブジェを実際に撮影した、ジョエル・マイヤウィッツの傑作写真集を見ますと、どうも強いアースカラーが現実の色味だったように思いました。

何でしょうね、ずっと見ていたくなる、本当に不思議な絵画です。セザンヌからの影響は勿論大きいと思いますが、描いているものが、無機的なものだけに絞られている為か、抽象度はずっとセザンヌより高く、しかし、完全な抽象画ではなく、そのせいか、奇妙な吸引力が画面にある様に思いました。