「マティスとルオー展 ― 手紙が明かす二人の秘密 ― 」へ
ルオー「窓辺の静物」1930 |
マティスとルオーはモローの同門だったのですね。マティスは1869年12月生まれ、ルオーは 1871年5月生まれなので、ルオーの方が2年年下で、ルオーの方が少し長生きしましたが、だいたい同じような年ごろで亡くなっていて、作風も住んでいた地域(マティスはモロー美術館の初代館長の仕事があり、パリに。マティスは色彩を求め、南仏に在住)も全く違うのに、家族ぐるみで晩年迄仲良く交流、そして文通していたのですね。陶芸家を紹介したり、展覧会の情報を交換したり、戦火の元で油絵のための油がないとぼやいたり、体調不純をぼやいて健康法について書いたり、と、この作家同士ならではの、現実的な会話が多くて面白かったです。また、マティスの息子がNYで画廊をオープンして、そこでルオーを紹介する展覧会を企画したり、子供の代に渡っても交流があり、本当に仲が良かったんだなということが分りました。
書簡もおもしろいのですが、作品群も充実していました。パナソニックさんは、ルオーのよき作品を沢山お持ちなので、ルオー作品が特に充実しており、一見の価値がある展覧会となっています。2人の全く作風が違う作家を年代順に並列して追う事で、2人の画業全体がざっと俯瞰できるような展示でした。
2人は作風が違うと書きましたが、共通したテーマとして、「サーカス」というのがあるのだということがこの展覧会を見てよく分りました。ルオーの方がサーカスのテーマを用いたのは先なようですね。
左:曲芸団の娘たち1924-25 右:JAZZ 1947 |
1924-25年「曲芸団の娘たち」
1925年頃 「女曲芸師(人形の顔)」
1931年の「大馬車(旧題:サルタンバンク)」
1938年の「流れる星のサーカス」(ヴォラールの出版)
などが展示されていました。ルオーは従来のアカデミーのテーマである、歴史、神話、といった内容ではなく、独自のテーマを探していたそうです。そんな中、流浪の民である、サーカスの人々の中にある、人としての神聖さを描きたかったのかなと思いました。「聖顔」に繋がる何かが、サーカスシリーズにはあるのでしょうね。
一方、マティスは、有名な「JAZZ」シリーズを最晩年の1947年に出版します。
JAZZシリーズは、実は当初「サーカス」というタイトル案があったそうで、確かに、ピエロ、ナイフ投げの男、女曲芸師、等々、サーカスがテーマなのですね。こちらは、皆さんご存知な様に、元は切り絵ですので、大変ポップでデザイン的、軽やかな色彩にあふれていて、目にも楽しい作品集で、ルオーとはある意味、対照的ですね。同じサーカスを全く違う解釈で捉えているのが興味深いです。
さて、今年から、新たな試みとして、私が展覧会で買った物をご紹介できたらと思います。今回、私が購入したのは、こちらです。
ルオー:ブルターニュの風景 1915 |
こちらの葉書です。写真だと奇麗に表現されませんが、美しいブルーの海、珍しく無人の、ルオーの風景画です。ブログの最初にも「窓辺の静物」を載せましたが、今回はルオー初期の風景画が大変気に入りました。あとは、サーカスシリーズでは、バックの色、緑や青など、不思議な色合いばかりで、この不思議な色使いもルオーの魅力だなぁと改めて思いました。あ、マティスへの言及が少なくてすみません、、、いろいろ美しい作品がきていますので、是非会場でご覧下さればと思います。彼のアトリエの写真での再現コーナーが最後にあり、撮影可能になっています。
マティスとルオー展 ― 手紙が明かす二人の秘密 ―」パナソニック汐留ミュージアム
開館期間 2017年1月14日(土)~3月26日(日)
開館時間 午前10時より午後6時まで(入館は午後5時30分まで)
休館日 1月18日、25日/ 2月1日、8日、15日
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