ゴールドマンコレクションこれぞ暁斎!世界が認めたその画力展

河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)の画業を紹介する展示が、Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催されています。

This is Kyosai!これぞ暁斎!展

公式サイト
2017/2/23(木)-4/16(日)まで
※会期中無休
10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

と、会期末が迫っている中での来館となりました。Bunkamuraザ・ミュージアムは公立美術館に比べ、遅くまで会館しているのが魅力の1つですね。

河鍋暁斎(1831-1889)は、江戸末期、茨城県古河市生まれ、浮世絵師 歌川国芳の門下となり、その後狩野派でも修行し、江戸琳派の鈴木其一の次女と結婚し、江戸琳派ともつながりを持った江戸末期〜明治の作家で、三菱一号館を設計した事でも有名な、建築家ジョサイア・コンドルを弟子に迎えたことも有名です。

東京では、暁斎関連の展覧会では、三菱一号館でのコンドルとの師弟関係にもフォーカスした「画鬼・暁斎」展が2015年の夏に開催されました。それ以来で最も大きな暁斎の展覧会でしょうか。ジョサイア・コンドルは今回、「ジョサイア・コンダー」と訳されていました。最近、この日本語表記、変わってきていますよね。

「クラナッハ => クラーナハ」
「フォックス・タルボット => フォックス・トルボット」

とかでしょうか、最近のことでは。。タルボットがトルボットとか大騒ぎすべきではない、みたいなことを、浅田彰氏が書いておられましたが、私も同感と思いつつ、でも、タルボット/トルボットは些細かもしれないけど、クラーナハとクラナッハの違いは結構大きいような。。などと思ったり。コンダーもコンドルは、まあ些細なレベルなのかな。話が逸れました。

今回の展覧会、何が特徴かと言いますと、英国の暁斎コレクター(個人コレクターでは屈指のレベルだそうです)イスラエル・ゴールドマン氏の個人コレクション、173点が公開されているのですが、このコレクションが、暁斎の画業を網羅的に集めている点ではないでしょうか。

最初は、上のフライヤーにもありますように、「地獄太夫と一休」の絵はいろいろな暁斎の画集にも載っていますし、ヴァージョンも幾つかあるとは知っていたのですが、不遜にも、あらこれが看板作品?と思ってしまいまして、行かなくてもいいかしら?とも思ったのですが、行ってとてもよかったです。後悔するところでした。。

第1章[万国飛-世界を飛び回った鴉たち]の章より
鴉は、暁斎を代表する画題の1つで、現在も画廊で購入することができる作品の1つで、たくさん残っているそうですが、この写真の他にもあり、珍しいものだと、闇夜の鴉の絵もありました。あとは、鵜と鴉の絵も。ジョサイア・コンドルが鴉の絵を英国に持ち帰ったところ、人気となり、追加で100枚ほどの注文があったそうで、暁斎は、自らを「万国飛」と名乗り、鴉の絵にその銘を刻印したそうです。この印がとても素敵でした。グッズで売ってたら買ったのになーと。

「万国飛」

第2章は、躍動するいのちー動物たちの世界、でした。狩野派的な題材である虎(下の写真)や、四条派的な画題の蛙や猫、狐、猿、鳥獣戯画を模したものなどなど、この第二章が個人的にはとても好きです。この虎ですが、猫、ですよね?虎を観察して描けないので、猫を描いたような虎の絵は様々な作家が残していますが、これもひょっとしたら、狩野派の描き方に倣っているのかもしれませんが、個人的には、虎らしい虎より却って好きで、ついつい絵葉書を買いたくなるものの1つです。

「月下猛虎図」1871-79

第3章は、幕末明治ー転換期のざわめきとにぎわい
文明開化の様子を、暁斎らしい観察眼で描いた作品群でした。

第4章は、戯れる/笑うー人間と性


鍾馗のシリーズ

戯れるーでは、鍾馗のシリーズ、鍾馗(しょうき)、は中国の民間伝承で伝わる道教の神様の1人で、江戸では、病治癒、学業成就のシンボルとしても人気があり、端午の節句に掛け軸を掛ける習慣があったため、注文も多く、作品も数多く残っているそうです。ここでも、ただ単に鍾馗を描くのではなく、暁斎らしい笑いとひねりが効いていて、とても楽しい作品が多かったです。

笑うー人間と性、こちらは春画のコーナーで、これまた笑いに溢れており、暁斎節が炸裂しておりました。春画というのは、多分、そういう需要があり、お金のため、修行のためにも多くの浮世絵師の通る道であったのでしょうか。現代の画家にはあまりないことかもしれないですね。むしろ、グラフィックや漫画系の作家に起こりうる事でしょうか?

さて、第5章は「百鬼繚乱ー異界への誘い」です。
暁斎の痩せた女性の幽霊が描かれた「幽霊図」は、2015年の夏に、東京芸大美術館で開催された「うらめしや~、冥途のみやげ」展―全生庵・三遊亭圓朝 幽霊画コレクションを中心に― 」でも同じようなものを見たように思うのですが、図録がないので残念ながら断言できません。

百鬼夜行図屏風 

「百鬼夜行図屏風」は目玉の1つですね。六曲一双という仕立ては珍しいそうです。軽妙なタッチで楽しく描かれています。

第6章 祈るー仏と神仙、先人への崇拝
最後の章は、暁斎の画力が本物であることを証明するかのような、細密なタッチの「李白観瀑図」や、中国山水図や釈迦と達磨などなど、暁斎の別の一面を垣間見ることができる章でした。

さて、ざっくりと感想を書いて見ましたが、これは暁斎ファンには見逃せない展覧会でした。最近、事情により展覧会から少し足が遠のいていたので、また春から見て回るぞ!と奮起できた展覧会となりました。暁斎先生、ありがとう!です。

最後に、恒例の買ったものシリーズです。今回は、ポストカード2枚です。
「雨中さき」「鯰の船に乗る猫」
右の「鯰の船に乗る猫」がとても気に入りました。暁斎は、鯰は官吏、猫は芸者の暗示として描いたそうですが、鯰は英語でcatfishです。それと猫、catのダジャレのつもりは、あるのでしょうか?それは別として、とても楽しめる一枚です。

(*写真は、特別な許可を得て撮影しています)

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