ルイーズ・ブルジョワ展 - 地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ - 森美術館

《蜘蛛》1997年

森美術館にて2024.9.25(水)~ 2025.1.19(日)まで開催中のルイーズ・ブルジョワ(1911〜2010年)の展覧会へ行ってまいりました。国内での回顧展は27年ぶりだとか。筆者は横浜美術館での27年前の展示を見ておりますが、横浜では大型のインスタレーション中心の展示でまだ作家も存命中であり、展示内容が今回とはかなり違う点や、私自身も歳をとり受ける印象が変わった点、そして森美術館では時代を反映したアップデートされた視点が加えられていた点などが印象深い展示でした。

章立ては以下の通りです。

第1章 私を見捨てないで

第2章 地獄から帰ってきたところ

第3章 青空の修復

《シュレッダー》1983年

展示では、ルイーズが幼少時代フランスで過ごした家庭環境から受けたトラウマが繰り返しモチーフとして登場し、男性性、女性性といった象徴的造形が絶えず登場します。森美術館の入り口にもある「ママン」の蜘蛛の彫刻がルイーズのシンボル的な作品として有名ですが、よく見ると巨大な蜘蛛は卵をお腹に抱えておりこれもまた「母性」「女性性」の象徴であることがわかります。

ルイーズは2010年98歳まで存命し、長い作家人生を歩みます。実は、蜘蛛の彫刻は彼女の晩年期の作品であったことが分かります。幼少期の家族生活から受けたトラウマが彼女を長年精神不安にし、カウンセリングを受けていたそうです。歳をとった彼女が動画の中でそのトラウマの原因となった出来事や怒りについて語っているシーンが流れていましたが、カウンセリングを受けてなお癒されることがない幼少体験のトラウマや、故郷フランスを遠く離れ、親しい人々と離別してきたことが多感なルイーズに深く刻まれ、それが原動力となって彼女を制作に向かわせていたのだとわかります。

所々に、彼女自身の強めの言葉が登場します。「攻撃」しないと、生きている気がしない。という言葉もあり、ドキッとしました。自己の攻撃性を全て作品に向けて生きたのだろうと思います。長年彼女を支えたアシスタントにも恵まれ、励まされながら制作を続けたそうですが、驚くべきバイタリティーです。こだわりの強さと多感な感受性。母として妻として、そして女性作家として生きることの大変さを感じさせる少し重たい、考えさせられる展覧会でした。お子さんには少し怖い展示かもしれません。家族で、というよりは一人で見に行って欲しい展覧会かなと思いました。

私が一番印象に残った作品はいくつかあるのですが、この素朴なペインティングに惹かれました。


2025年1月19日まで、チケットは平日やオンライン購入が窓口より200円安くなります。開館時間は火曜日は17:00まで、その他の曜日は10:00-22:00までです。公式サイトはこちらです。

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